人から何かを引き出すって、簡単なようでいて案外、難しいもの。簡単だと思っている人は、きっと表面的な対応で満足しているかと。
より深いところまで辿り着いた回答を引き出したいと考えるボクらとしては、日々、インタビューやヒアリングの仕方を研究しているハズ。
そんなボクは、仕事柄、聞き手に回ることがあります。だからこそよく分かるのですが、簡単に済ませようと思ったら、変な話、いくらでも手を抜けます。自分の意思だけで「この辺でいいか」と切り上げられるから。ただ、そんな表面的なヒアリング結果に基づいて、あーだこーだと分析して行動に移しても、的外れになるのは必至。そんなシーンを見た経験は一度や二度ではないでしょう。
つい最近も、そんなシーンに遭遇しました。それは、インタビューを受ける立場になったときのこと。研究心があるものだから、質問に答えながらも俯瞰して場の状況を眺めちゃいました。
そのときのインタビュアーはあまり慣れていないようで、大雑把な質問を投げることもしばしば。ボクは俯瞰して見ているので、相手が求める意図を汲んだ上で回答しています。とはいえ、中には「えっと、それはどう答えれば良いですか?」と聞き返す質問もありました。
おそらくはオープンクエスチョンで質問するように教育を受けたのでしょう。イエスやノーという閉じた回答をもらうようなクローズドクエスチョンではありませんでした。そういう意味では、正解です。
しかし、だからと言って、オープンクエスチョンでもない。それが問題。なにせ質問の仕方が大雑把すぎるので、質問の意図が汲み取れない。つまり、回答のしようがないのです。ボクはまだ協力姿勢でいましたが、そうではない人だと、いくらでも適当な回答をして、はぐらかせられそう。
オープンクエスチョンとは、具体的に詳細な内容を聞き出す質問のしかた。そのためには、質問者が、意図を持ちながらも決して誘導しないように、質問しなければなりません。イエスやノーではない質問を、何も考えずに投げることではないのです。
もっといえは、質問する前に、話しやすい「場」を作らなければなりません。そんな仕掛けをするときには、ファシリテーションのスキルが役立ちます。議論が活発になる場を作るファシリテーターは、ちゃんと仕掛けをしているのです。
そのためには、心理的なアプローチを身につけておく必要があります。ただし、テクニックに溺れてはダメ。ちゃんと相手のことをひとりの人として見なきゃ、深い回答には辿り着けません。
そうそう、以前にボクが受けたインタビューは、とても上手な聞き手でした。もともとは新聞記者をされていたようで(って、ボクもしっかりと相手から聞き出しています)、経験豊富。
しかも、ただ場数を重ねているのではなく、相手を理解したい気持ちが伝わってくるインタビュアー。決して当初思い描いていたストーリーに何が何でも当てはめようとするタイプの人ではありませんでした。
そんな聞き手に質問されて、ボク自身、気づいていなかったことが引き出されました。あれは、純粋にすごいと驚かされましたよ、ホント。1、2時間程度だったと思いますが、良い体験ができました。
そういえば、監査手続としての質問スキルについて、誰もが再現できるような形でとりまとめたい気持ちがあったことを思い出しました。今、手掛けるなら、ファシリテーターを育成するようなプログラムになるかも。あっ、そっちのほうがいいか。こうして今、真の答えが引き出されました。
P.S.
ボクの話を引き出されたのは、こちらのインタビュー。ちょっと恥ずかしいですが、良ければご覧くださいませ。ついでに「いいね」も押していただけると嬉しいです。
https://maonline.jp/articles/tyosya0314
P.P.S.
このインタビューは、M&A会計をテーマにした本を出版したことがきっかけでした。
・竹村純也『M&A会計の実務』