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「対案を出せ」の洗脳

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

知らずに正しいと思い込まされている行為って、ありますよね。きっと誰かが意図的に仕掛けたものが、あたかも正当な行為として受け取ったために、何も疑わずに投げかけているのでしょう。ある意味、洗脳。

それは、「対案を出せ」と迫る行為。何か新しいことを提案する人が、それに批判的なコメントを受けて、「それじゃあ、対案を出せ」と言い返すもの。そんな場面に遭遇したこと、ありませんか。

あれ、開き直り以外、何者でもない。逆ギレと言ってもいい。なぜなら、民主主義のルールを理解していないから。それが丸わかりになる行為なんです。

何かを決めるにあたって、賛成派と反対派のどちらもいるのが通常。絶対の正しさなんてない。だから、多数決が100対0で決まることはない。

最もわかりやすいのが、51対49で決まるケース。そんな僅かの差であっても、決まったなら、それを尊重して運用していくのが民主主義のルール。

もちろん、絶対的な正しさではないため、永遠に尊重されるものでもない。過去の判断をひっくり返してもよい。だからといって、どんな場合でも変えていい、ってものでもない。多数決の結果に従って運用し続けている人が大勢いることを忘れてはいけません。

そのため、新しい提案を通すなら、説明を尽くす必要があるのです。ディベートの方法論に基づけば、新しい提案で説明すべきは、次の4点。

1点目は、現状にどんな問題があるか。そもそも問題がなければ、提案を検討する必要すらありません。

仮に問題があったとしても重大でないなら、新しい提案を採用しなくても大きな支障がないと判断することもあります。過去の判断がすでに運用されている現状において、新しい提案を採用するコストのほうが上回りかねないから。

2点目は、現状の問題のどこに原因があるか。その原因を明らかにしなければ、新しい提案が間違った方向に進んでしまいます。効果が得られなくなるため、しっかりと現場を観察することが大事。

3点目は、その原因をどのように解決するか。新しい提案が、現状の問題の原因を取り除いたり、減らしたりするものである必要があります。そうでなければ、採用しても問題は残り続けることになります。また、実行できないような提案でも意味がありません。

4点目は、新しい提案によってどんな利点が得られるか。提案を採用することで、期待する効果が得られる必要があります。利点が得られても大した効果でない場合には、採用するコストに見合わないこともあるからです。あるいは、その採用によって別の問題が生じる場合にも新しい提案を採用しないと判断することもあります。

このような4点について、提案者は説明していきます。これらに納得してもらい、また、それらへの批判的なコメントにも対処できてこそ、新しい提案が受け入れられる土壌ができるのです。

このときにダメな例が、先ほどの「じゃあ、対案を出せ」という反論めいたもの。「めいた」と言っているとおり、それは決して反論ではない。なぜなら、開き直りや逆ギレの類いだからです。

よく考えてみてください。今、提案者は、51の割合の得票で運用されている現状に反対しているのです。ひとつひとつ説明をつくす必要があるのは、49の割合の票を支持した人、つまりは提案者のほう。現状を支持している人が、現状を変える案を出す必要なんてない。

だから、提案が否定されたなら、現状のまま。対案を出せなんて言われる筋合いは1ミクロンもないのです。それなのに対案を求めるとは、とにかく現状を否定したいだけの開き直りや逆ギレ。意図的に仕掛けているケースを除けば。

ところで、ドラマで話題になった「逃げるは恥だが役に立つ」で、主人公の伯母、土屋百合はこんなセリフを残しています。

 今あなたが価値がないと切り捨てたものは、この先あなたが向かっていく未来でもあるのよ。自分がバカにしていたものに自分がなる。それって、辛いんじゃないかな。
私たちのまわりにはね、たくさんの呪いがあるの。あなたが感じているのもそのひとつ。自分に呪いをかけないで。そんな恐ろしい呪いからはさっさと逃げてしまいなさい。

これに照らすなら、ボクが哀れに思うのは、「対案を出せ」と迫るビジネスパーソンが少なくないということ。そうして民主主義のルールを理解せずに論破した気になっていると、いつか、同じ行為が自分に向けられます。そんな洗脳からさっさと解けてしまいなさい。

P.S.
このドラマの放送は、2016年10月から。まだ1年くらい前かと思っていたら、もう2年も前なんですね。
・主演: 新垣結衣『逃げるは恥だが役に立つ Blu-ray BOX2017』

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