マーケティングと聞いて何を思い出しますか。人によっては統計やプレゼンなどを思い浮かべるかもしれません。
確かに、そうした局面があるのも事実。しかし、それは一面に過ぎません。いわゆるマーケティングの世界では、顧客との関係づくりのことを指します。
まず、まったく関係がなかったところから、自社に関心を持ってもらって「見込み客」へと変化させます。例えば、チラシを巻いたり、ランディングページへと誘導したりと、ひとりでも多くの人に興味をもってもらう段階。
次に、見込み客の段階から、実際に製品やサービスを購入してもらう「既存客」へと変化させます。チラシやランディングページに訪れた人に、自社の製品やサービスの購入へと促す機能を果たしていく段階。
最後に、既存客を何度も製品やサービスを購入するような「継続客」へと変化させます。顧客へのフォローを通じて、自社のファンになってもらう段階。こうして盤石な基盤を作っていくのがマーケティングのセオリー。
マーケティングの世界では、それぞれの段階で然るべき手法が確立されています。この一連の流れは、突き詰めると「行動への呼びかけ」。送り手が、受け手に対して特定の行動を求めるメッセージを送ることなんです。セールスの局面で言えば、製品やサービスを買って、という呼びかけること。
これを説明するときに、よく持ち出すケースがあります。それは、メール。いろいろと書いてあった最後に、「ご確認ください」と締めているものがありますよね。こういうメールにどう対応していますか。
このときに、コメントを返す人はとても優しい。なぜなら、「ご確認ください」というメールを受け取った人は、その内容を確認さえすれば、送った人のリクエストに応えたことになるからです。
おそらくメールの趣旨は、「コメントをください」や「ご指摘ください」という行動を呼びかけるもの。しかし、その呼びかけを具体的に明示して呼びかけていないため、実際にコメントや指摘を求めているかどうかはわからない。だから、文字通り、確認をして終わっても文句は言えないのです。
この話の教訓は、メールを返さないではなく、呼びかける行動を明確にすること。「ご確認ください」で匂わすのではなく、「コメントをください」「ご指摘ください」と具体的な行動を呼びかける必要があるのです。マーケティングでは、こうした行動の呼びかけの作法が確立しています。
行動の呼びかけなら、何もマーケティングの世界だけで使う理由はありません。社内プロジェクトのメンバー集めだったり、リクルートの採用だったりと、適用する局面はさまざま。そんな話を、とある組織でリクルートを担当している人に説明していました。
そのリクルーター曰く、そもそもリクルート・イベントが知られていない、それを知っていても参加に繋がらない、リクルート・イベントに参加しても採用に結びつかない。ホラ、これ、マーケティングでいう見込み客、既存客、継続客と同じですよね。だったら、すでに確立されているマーケティングのノウハウを利用しない手はありません。
もし、リクルート・イベントに参加しても採用に結びつかないというお悩みであれば、マーケティングの世界には、すでに答えが用意されています。それは、日本で著名なマーケッターの神田昌典サンによる著書『もっと あなたの会社が90日で儲かる!』(フォレスト出版)。2000年6月発刊にもかかわらず、今での通用する話が盛りだくさん。
その中でも、リクルートのお悩みに照らすと、「21日間顧客感動プログラム」が役立ちます。既存客が製品やサービスを購入してから21日間の中で、3回、顧客と接触することが良いと示されています。1回目は購入直後のお礼状、2回目は一週間後の連絡、3回目は思いがけないギフト。これによって、既存客を継続客へとシフトさせられるといいます。
リクルートに照らすなら、リクルート・イベントが購入と同じ。とすると、イベントの直後にお礼状を送ります。彼の業界では、メールベースで翌日に接触するケースはあっても、手紙を送っている同業他社はないとのこと。だったら、手紙を送ると同業他社との差別化できます。その話を聞いただけでも彼は大喜び。
しかも、一週間後に、連絡を送っているところは皆無とのこと。そこで、リクルート・イベントに参加した人だけにシークレット・イベントへと招待する手紙を送ると、特別感が満載。参加するだけで優越感が得られるため、より採用に結びつきやすいでしょう。
あるいは、リクルート・イベントに参加したときに、スタンプカードを渡すのもアリ。例えば3回参加してスタンプを集めると、ちょっとした何かがもらえるといった特典があるのもいい。そんな話を聞いて、リクルーターの彼はどんどん前のめりになってきます。
ね、マーケティングのノウハウがリクルートにも十分使えるでしょ。これも、どちらも「行動の呼びかけ」という点で同じなため。だから、その作法が確立しているマーケティングの手法が、リクルートでも活用できるってワケ。
このように、ちょっと違う世界を覗いてみると、こんなにも使えるのかというスキルやノウハウがそこにあります。誰かに行動を呼びかけることを考えているなら、マーケティングの世界を覗いてみると良いかも。神田昌典サンの本の一番最後には、この言葉で締めくくられています。
追伸、あなたは、どこから、はじめの一歩を踏み出しますか?