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良い反応を得るために必要なもの

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先日、他の人から何を言われても頑なに拒んでいた人がいました。仮にAサンと呼びましょう。そのAサンにボクが話していると、最初は拒んでいたものの、やがてこちら側の提案を受け入れてくれるようになっていきました。

こちら側の人たちは「Aサン、今日は機嫌が良かったみたいだ」と気分の問題だと捉えていました。しかし、それが間違い。ボクがAサンに共感を示したから反応が変わったのです。一方的に意見を押し通すのではなく、それをいったん受け止めるのが良い。

こんな別の話もあります。随分と前のこと、M&Aの財務デューデリジェンスを行ったとき。売り手の会社の社長には後継者がいなかったことから、会社の売却を検討しているとのこと。その社長を、仮にBサンと呼ぶことにしましょう。

財務デューデリジェンスで会社に伺う30分前に、M&Aの仲介会社の方々と合流。いわゆる、営業の方たち。お二人まとめて、Cサンと呼ぶことにしましょう。Cサンはボクらのチームに会うなり、こう話し出します。

「B社長、かなりクセが強いんですよ~。ちゃんと話をしないし、お茶も出さない。我々は案件を成功させるために相当気を遣っているので、竹村先生たちも接し方に気をつけてください」

ふ~んと思いながら会社に着くと、B社長はまだ到着していませんでした。飼っている犬の散歩から帰ってきていないとのこと。そこで、中に通していただき、会議室で待ちます。そこでもCサンはブツクサ言っています。

「あの社長ったら、10時に行くって言っていたのに、もう。そうそう、お昼の食事も用意してくれないので、自分たちで外に食べに行かないと。この辺、お店がないからな~」

5分ほどすると、B社長が犬と一緒に戻ってきます。「毎日、散歩してあげないとダメだから」と話しながら、会議室に入ってきます。名刺交換をし、B社長から簡単な会社概況を説明していただきます。

少し特殊な業界で、女性の社長が一代で築き上げてきた会社。高齢のB社長がビジネスをしてきた時代は、普通にビジネスしていくにもおそらく「女性だから」と対等には扱ってもらえなかったハズ。それが特殊な業界なら、なおさら相当の苦労があったのは容易に想像がつきます。

それでも会社をここまで成長させているのだから、自分の子どもにように可愛いに違いない。そんな会社を手放す時期が来ているのです。複雑で、不安で、寂しく思っていることでしょう。B社長の想いに寄り添っていたら、こう言葉がでました。

「ご苦労されましたね」

その瞬間、B社長の目から涙が溢れ出ます。ボクもつられて涙目に。その一言で、通じ合えました。深いところで共感が生まれたのです。そこからはB社長はボクらには協力的に説明し、資料も出し、不明な点はすぐに顧問税理士に電話をかけて話をつないでくれます。

それを隣で見ていたCサンは、ポカ~ンとしています。そりゃそうです。今までとまったく対応が異なるのですから。「おいおい、今日はお昼ご飯も、お菓子も出してくれるぞ」と不思議がっています。

そして、こう続けます。「B社長、今日は機嫌が良かったみたいだ」と。だから、それは違うって。

Cサンが席を外すと、B社長はボクらに打ち明けます。「Cサンは信用できない。早く契約させようとして、こちらの気持ちを何も考えてくれない」と。確かに、まだ2時間くらいしか一緒にいませんが、Cサンの態度は悪い。思えば、出会った瞬間の初対面で、あんな発言をすることもおかしい。単にCサンがB社長と関係を築けていないだけだったのです。

ボクらの現場でのデューデリジェンス作業が終わったため、B社長に帰りの挨拶に行くと、「これ、美味しいから持っていって」とお菓子を沢山もたせてくれました。その後、無事にクロージングまでに至ったようです。

このように、共感をすることは大事なこと。しかし、気をつけたいのが、テクニックで共感しようとしてはダメ。スタニスラフスキー・システムといった演技技術を学んだのならいざ知らず、経験のない素人がテクニックだけで対処することはムリ。っていうか、その前に失礼。ちゃんと人として向き合わないと。

相手に寄り添おうとする気持ち。相手にかける言葉の選び方。そうしたものが共感を生むのです。そうは言いながらも、ボクもまだまだ修行中。あなたに振り向いてもらえるまでは。

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