文章を書くのが苦手。そう感じている人も多いでしょう。ボクも昔は、すらすらと、しかも長い文章を書く人のことが信じられませんでした。それが今や、年に一冊のペースで本を出すようになっています。
ボクが文章を書けるようになったきっかけは、「マインドマップ」。イギリスの著述家であるトニー・ブザン氏が開発したノート術。これによると、1枚の紙の中で、情報や思考を網羅的に整理できます。
このマインドマップの効果について、ボク自身が驚いた実話があります。それは、ボクの娘が小学1年生のときの遠足。帰ってきてから、遠足について作文を書くことが宿題になっていました。
しかし、娘は原稿用紙を前に、一文字も書けずに固まっています。何をどう書けばよいのかがわからずに困っていたのです。
そこで、「一緒にマインドマップを描いてみよう」と声をかけました。ボクが聞き手となって、娘が回答した内容をマインドマップに書いていったのです。
「遠足に行くときには、誰と一緒だった?」
「どんな話をしたの?」
「途中に何を見た?」
「お昼ご飯のときは、どんな感じだった?」
「行った先で、何が楽しかった?」
こうして時系列にインタビューした結果を、目の前のマインドマップに単語だけを繋げていきます。10分もしない間に、A4用紙がマインドマップのツリーで埋まりました。そこで、こう話しかけます。
「このマインドマップの内容を、そのまま作文に書けば良いよ」
書くための素材を得た娘は、原稿用紙に向かって作文を書き始めます。マインドマップを横におきながら、遠足の様子を思い浮かべて筆を進めていく。すると、あっという間に完成。マインドマップを描く前の、一文字も書けなかった娘は、一体、どこに行ったの、という感じで。
しかも、マインドマップの効果はここで終わりません。その後、娘は作文が大の得意になったのです。作文の宿題があると、所定文字数を超えるボリュームで、ラクラクと文章を書けるようになったのです。
おそらくは、マインドマップを頭の中で描いていたのでしょう。書くべき素材を整理しているがゆえに、すらすらライティングできるようになったのです。お父さんが30代後半まで苦しんでいた作文を、娘は6歳で楽勝になったのです。羨ましいったらありゃしない。
ボクは、ビジネスの場でもマインドマップを使っています。研修を受講するときや、審議会に傍聴するとき。あるいは、事務所内のプロジェクトでミーティングするときなど。これは作文というより、情報を整理する目的が強い。
特にプロジェクトのミーティングでは、参加者がみな、マインドマップを使っている訳ではない。皆無といってもよいでしょう。そうでありながらも、何ら説明することなく、ホワイトボードにマインドマップでミーティング内容を描いていきます。でも、マインドマップで描く内容を実質的に共有することができています。
そのマインドマップは、作文に活用することもあります。マインドマップに基づき、議事録を作成するのです。自分で言うのもなんですが、必要な事項が網羅的に整理されてまとまっています。ときには、その議事録から抜粋することによって、成果物の説明文書を作ることもあります。それくらいのレベル感であり、また、成果物を見越して文章を作っている議事録でもあるのです。
そんな芸当ができるのは、マインドマップのおかげ。1枚の紙で必要な情報が一望できるため、全体を俯瞰することができます。項目間のつながりを見つけることもできれば、説明のための階層をつけやすくもなります。情報を記録するノート術でありながら、情報を編纂することもできるノート術なのです。ちなみに、このブログにアップした写真は、ここ一週間以内に描いたマインドマップ。少しぼかしていますが、下半分がその部分。
ただ、残念ながら、2019年4月13日に、マインドマップを開発したトニー・ブザン氏がお亡くなりになりました。しかし、マインドマップの灯火は消えません。なぜなら、ボクの芸当を目の当たりにして、マインドマップを使い始めた後輩がいるからです。さらに、その後輩がマインドマップを使っているのを見て、興味をもって使い始めようとしている後輩も現れています。こうして、マインドマップが自然と広まっているのです。トニー・ブザン氏のマインドマップにかけた想いが引き継がれています。
あなたが文章を書くことに悩んでいるなら、一度、マインドマップを体験してみてはいかがでしょうか。誰かの書いたマインドマップを見ているだけでは、その効果を実感できません。やはり自身で体験すべき。でなければ、トニー・ブザン氏の想いに触れることはできない。
ご安心ください。小学生でも使えるので、何も難しいことはありません。お絵かき感覚で気楽に描くだけ。意外と「手」がおしゃべりなことに気づくかもしれませんよ。