Business model

ビジネスで引き継ぐもの、手放すもの

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

 まさか、「ぐわし」でビジネスの大事なことを学ぶとは思いませんでした。この「ぐわし」をご存知でしょうか。楳図かずおサンが描く漫画「まことちゃん」の主人公の決めポーズのこと。

 というのも、今日のお昼休みに、後輩たちと話していたときのこと。ボクが手を使ったポーズをしたところ、後輩から「それ、ぐわしですか?」と尋ねられたのです。

 しかし、それはぐわしとは程遠いもの。本当のぐわしを知らない後輩は、ボクの世代から推測して判断したようで。あの世代がする変な手の形は、ぐわしに違いないと。

 そこでボクは、本当のぐわしを見せつけます。中指と小指を同時に曲げました。それを再現したのが、今回のブログにアップした写真。

 後輩たちはそれを見て真似しようとしますが、うまくはできない。そりゃそうです。ボクら以上の世代は、この習得に時間をかけているのです。そう簡単にはできない。

 間違いやすいのは、飛行機の手真似。人差し指と薬指とを曲げるやつ。ぐわしで曲げるのは、それではありません。中指と小指。

 面白いのは、中指だけ曲げる、あるいは、小指だけ曲げるのは簡単にできます。しかし、これを同時に曲げてみてください。思った以上に大変じゃないですか。ましてや、もう一方の手でこれらの指を触ることなく、2つの指だけを曲げていくなんて。

 ボクが小学生のころは、ぐわしをいかに早く、かつ、綺麗にできるかを競い合ったものです。だから今でも、補助なしで右手と左手を同時にぐわしにする芸当も可能。

 それが今や、競い合うどころか、そもそもぐわしができない状況。というか、知らない世代になっています。あの自主的な鍛錬が、世代が変わって引き継がれなくなっているのです。

 もしかすると、「竹村さん、何を大げさに話しているのですか」と呆れているかもしれませんね。確かに、ぐわしはまだ遊びの世界だから笑い話で済みます。それができなくなっても誰も困りません。生みの親の楳図かずおサンを除けば。

 しかし、これが、あなたの組織の大事な何かが引き継がれなくなったとしたら。それでも、本当に呆れていられるでしょうか。むしろ、ぞっとするハズ。

 例えば、あなたの組織で大事なマインドが引き継がれくなったとしましょう。すると、各々が勝手な方向に進みます。それでは、組織が目指す方向に進むことができません。

 また、仮にマインドが共有されていたとしても、それを実現させるスキルが継承されなければ、どうなるでしょう。誰もが同じ方向を進むものの、組織で達成したいことが実現できなくなってしまいます。

 さらに、マインドもスキルも共有されていたとしても、それを補助するツールが意図したとおりに使われなかったらどうでしょう。組織のメンバーが同じ方向に進み、達成したいことも実現できるにもかかわらず、期待したような結果とは違う状況が生み出されてしまいます。

 このように、引き継ぐべきものが引き継がれないと、その組織は意図した活動ができない状況に陥るのです。組織にとって大事なものは、しっかりと継承していく必要があるのです。

 このことについて、生物学者のジャレド・ダイアモンド氏は『文明崩壊』(草思社)の中で、こう説明します。時代の変わり目で、守るべき価値観を維持し、変えるべき価値観を手放せなかった社会は崩壊してしまう、と。社会という大きな単位の組織ですら、守るべきものが引き継がれないと維持できなくなるのです。

 振り返りたいのは、あなたが所属している組織で、引き継ぐべきものが適切と引き継がれているかどうか。崩壊した後に気がついても遅すぎます。注意深く観察すると、ぐわしのように些細なことがアラームを出しているかもしれませんよ。

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