Accounting

決算説明で「全社一丸対応」すべき理由

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最近、ボクがセミナーで経理や開示の担当者に向けて話しているのは、「全社一丸対応」の必要性。昔、全社一丸営業なんて言葉がありましたが、それの決算版。

 これを話す局面は、収益認識の新しい基準への対応だったり、KAM(監査上の主要な検討事項)に伴う追加的な開示への対応だったりと、さまざま。ディスクロージャーワークショップグループの報告を受けた財務報告の改正を受けて、なお、その必要性が高まっています。

 決算に関する対外的な説明の資料は、以前なら、経理が作る決算書で多くをカバーできました。その作成ルールはどの企業でも同じように算定される性質であったため、客観性がありました。これは、どんな数値が導かれたのかが企業の外部からも理解しやすかったことを意味します。

 ところが、西暦2000年を迎える少し前から、日本の会計基準は、見積りの要素が強まってきました。もちろん、海外の会計基準の影響が大きい。それは、当時の「レジェンド問題」の影響。このレジェンドは、伝説ではなく、警句のような説明文の意味。

 当時、海外の証券市場で上場している日本の企業が、欧州で日本の企業が決算書を開示するときのこと。その決算書が日本の会計基準に基づいて作成されていると会計士の監査報告書に記載するような事態になっていたのです。つまり、レベルの低い決算書だと言わんばかりに。

 その頃の海外の会計基準は、見積りの要素が多い作成ルールに移行しているところでした。そのルールの方が、損失計上を先送りにしないといった理由で、品質が高いと考えられていたからです。

 その後、日本の会計基準も改正や新設を重ねて、今では、ほぼほぼ海外の会計基準と同等の作成ルールになっています。これによって決算書は、見積りの要素が多くなっています。

 ただ、この見積りは、経理だけで行えるものではありません。固定資産の減損会計や税効果会計などでは、将来の事業計画が必要だから。その事業として、複数の事業が合わさった全社として、連結子会社も含めた連結グループとしての業績予測が、会計処理を行うときに必要になってくるのです。

 ここで問題だと考えているのが、決算を説明するという観点で考えている部署があるか、というもの。もちろん、そのように開示を全社的に取り扱う専門部署を設けている会社もあるのは事実。しかし、すべての上場企業にそうした機能を果たす部署があるかというと、疑問が残ります。

 というのも、経理部門は、開示よりは、会計処理を担う部署。これは、ASBJの会計基準が会計処理を担う一方で、財務諸表等規則といった規則が開示を担う関係にあることが影響していると考えています。

 すると、経理部門は会計処理を定める「会計基準」に関心が向くことから、開示に割くリソースが相対的に低下しかねない。では、どこで開示を専門的に、全社的に、また、戦略的に検討しているのか。見積り項目が増えた現状では、既存のどこかの部署だけで担うものではない。全社的に取り組まないと、効果的に進められないのです。

 そういう現状でありながらも、ディスクロージャーワークショップグループの報告を受けた財務報告の改正は、次々と制度化されていきます。しかも、企業の体制が十分に整わないうちに。付け加えるならば、その危機に気づいてもいない可能性もある。

 だから、今のボクは、そのリスクを周知しながら、その対応策を提示していくことに注力したい気持ちでいっぱい。そこにフルでコミットメントできない現状がありながらも、できる限り、その活動を展開していきたい。そこでは、あなたのコメントも聞きながら。

P.S.

日本におけるKAM早期適用事例の分析について、当ブログでは「財務報告の流儀」というシリーズ投稿で解説しています。ただ、ワンコインの有料コンテンツとして提供しているため、「お試し版」をこちらで用意しています。

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