Career

キャリアにおける「コンストラクタル法則」

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

 今日、会計士の知人から、メールが届きました。そのタイトルは、退職のご挨拶。少し前に話を聞いていたため、「ああ、もう、その時期なんだ」と感慨深いものがありました。

 このメールのタイミングは、特におかしなものではありません。というのも、会計士業界では、6月末をもって退職や転職で旅立っていく人が多いから。ちょうど、この時期がお別れの季節なんです。

 なぜなら、日本の企業では3月末決算が多いため。それに合わせて会計監査の業務は、7月から6月というスパンになる。だから、6月末が業務の切り替わりのタイミングのため、退職や転職が多いのです。

 ちなみに、ボクが今、所属している監査法人が3つ目。つまり、2度の転職経験があります。しかし、その時期は、12月末と7月末でした。引き継ぎの都合とはいえ、変な時期に動いていたものですね。

 で、知人の話に戻ると、メールの文面によれば、組織に在籍していた期間が20年を超えていたとのこと。その部分を読んだ瞬間に、時間の重さを感じましたよ。楽しかったこと、辛かったこと、嬉しかったこと、悲しかったこと。そうした体験や感情が、その20年超に込められていると思うと、少し唸ってしまいました。

 ただ、知人の進む道は、明確。標榜するところに向かって突き進んでいる。なので、ボクとしては、ひたすら応援するばかり。そんな思いを伝えたら、知人らしい、グッと来るような返事がありました。ボクが2度目の転職を果たしたときにも、それに近いメッセージをもらったのを覚えています。やはり、知人は何もブレていない。

 退職でブレるといえば、むしろ、組織の経営者のほうかも。これは、知人がいた組織という意味ではなく、一般的な組織という意味で。ボクが思うに、ハイ・パフォーマーの使い方をわかっていない組織が多い。

 組織には、パフォーマンスの高い人と低い人とがいます。また、そのパフォーマンスの発揮先には、組織の外部と内部の2つがあります。これらの組み合わせによって、4つのタイプの人が組織に存在していることになります。

 このうち、内部に向けたハイ・パフォーマーとは、管理部門や間接部門などで高いレベルで成果を出している人を指すとします。こうした人は、組織が手掛けるビジネスの品質を確保するために必要な存在。

 一方、外部に向けたハイ・パフォーマーとは、営業やマーケティングなどで高いレベルで成果を出している人を指すとします。情報発信ができることも、今の時代、とても貴重なスキル。こちらも、組織が手掛けるビジネスのお客さんを見つけてくるために必要な存在。

 こうした分類をしたのは、ハイ・パフォーマーの扱い方を理解するため。ハイ・パフォーマーは、いくら生産性が高いとはいえ、抱えられる業務には限度がある。リソースが限られているため、何をやらせるかの配分には気をつけるべき。

 ところが、経営者や上司の中には、ハイ・パフォーマーを見つけると、何でもかんでも押し付ける人がいます。「問題に気付いた人がそれを担当する」なんて言う人がいますが、もう、最悪なマネジメントの代表選手。優秀な人だからといって、外部も内部も押し付けてはいけない。リソースが限られているのだから、どちらかに優先すべき。

 いずれも大事ではあるものの、どちらかをより優先すべきかといえば、外部のほう。お客さんを見つけられなければ、ビジネスの品質を維持・向上させても、受け取る人がいないため、意味がなくなるから。もちろん、ビジネスのサイクルによって優先度は変わるため、組織が外部に向けた活動ばかりで占めないように注意が必要。

 しかも、やっかいなのは、外部に向けたハイ・パフォーマーに対して、内部の業務もやらせるとき。やたらと管理してしまうと、ハイ・パフォーマーのやる気が削がれます。

 ハイ・パフォーマーは、創造的な仕事でパフォーマンスを高めているのであり、また、それを自負している。だからこそ、ハイ・パフォーマーに対しては、基本的には自由にやらせることが大事。ただ、悲しいかな、不勉強なロー・パフォーマーは、管理をしたがる。ハイ・パフォーマーの扱い方を知らない結果、ハイ・パフォーマーが組織から去っていくのです。

 だから、経営者は、マネジメントを学ぶ必要がある。時々、「勉強なんかしている暇なんかない」とほざく経営者がいます。ハイ・パフォーマーが100人いたら100人が「勉強していないから時間がとれないんだ」と即答するでしょうけどね。

 組織から去ったハイ・パフォーマーは、どこに行くのか。きっと、どこかで合流するハズです。特にSNSで直接のコミュニケーションが可能となった今、同じ組織に所属していなくても、仕事を一緒にすることができるらから。そんな支流が集まることで、大きな本流となっていく。まさに、コンストラクタル法則

 知人がどこの本流に合流していくのか、それが楽しみ。そんな知人に贈る言葉は、「頑張れ」じゃなく、「またね」。だって、ボクもコンストラクタル法則にのっとれば、どんな形かは別として、合流していくのですから。

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