長い会議。2時間、4時間、8時間という会議を経験したことがある人も少なくはないでしょう。「もっと、短くならないかな」と切に願っているかもしれません。
そんなときには、情報の流れをデザインすると良い。最近、ビジネスの世界では、「デザイン思考」という言葉をよく聞きます。これは何も、絵画や工芸品のように芸術的なセンスを求めているのではありません。組織や業務プロセスをどう設計するか、というロジックの話。
会議には、発想を広げていくタイプと検討を加えて結論を出すタイプの2つがあります。基本的に会議といえば、結論を出すタイプのこと。なぜなら、結論を出す人たちは、組織の中では単価が高いから。
専門でもないテーマについて単価の高い人たちが集まって、ゼロからブレインストーミングを始めるのは非効率このうえない。しかも、結論を出す人たちを集めて、発想を広げるような議論を始める組織で、その場の力を引き出すファシリテーションができる人もいないとすると、無制限に時間を費やしてしまいます。
また、やたらと大人数が集まっている場では、誰もが同じ方向を向いているとは限らない。ましてや、判断のための指針が定められているどころか、共有さえもできていない場合には、収集がすかない。そんな中で、ゼロから議論を始めては、決まるものも決まらない。で、声の大きな人の意見で進んでしまうか、あるいは、時間切れや披露でいい加減な結論で済ませてしまうかのどちらか。
そうした悲劇を招かないためには、テーマを担当する人たちが、深い検討を踏まえた結論を会議に提示する必要があります。そのためには、然るべき情報を収集しなければなりません。これはアイデアを広げていくためには不可欠のプロセス。こうしたインプットがある人たちで、ブレインストーミング的な検討を行うのです。
発想を広げた次には、結果を出すためにそれを絞り込んでいきます。広げたアイデアの中から、いくつかの方向性を絞り込んだものこそが、検討に出すべき議題であり、また、検討に値する議題。そのプロセスを抜かして、会議の場で「さあ、どうしましょう」と救いの手を求めるのは、職務放棄と言われても仕方がない。
したがって、結論を出すタイプの会議にあげる議題とは、担当者の中で散々揉んだ内容であるべき。その際に、どのような観点で検討したのか、その過程でどのような論点が生じ、また、対応していったのか、その結果、どのような結論に至ったのか、さらに、会議に出席している人たちにどのような行動を呼びかけるのかなどをコンパクトにまとめる必要があります。
このことは、コンストラクタル法則でも説明できます。これは、デューク大学J.A.Jones 特別教授で、熱工学者であるエイドリアン・べジャン氏が提唱する物理の第一原則。『流れといのち』(紀伊国屋書店)の中で、コンストラクタル法則をコミュニケーションに適用した影響について、こう述べています。
コミュニケーションの物理的影響は、そのコミュニケーションが受け取られ、デザイン変更が行われた(改善された古い流路の上の新しい流路が重なった)あとに、どれだけ新たな動きが可能になったかによって測定できる。
つまり、会議に提示された議題によって、出席している人たちがどれだけ新たな動きが可能になったかがポイントになること。また、そうなるために会議をデザインすることが求められるということです。
結論を出すタイプの会議でゼロから検討を始めていては、出席者は結論をだす過程から付き合わされます。しかも、また、そのために必要な情報が必ずしもない状態。それでは、新しい動きは生まれません。コンストラクタル法則に従っても、そのコミュニケーションはより良く流れない。一言で言えば、「生産性が低い」のです。
8時間の会議を1時間で終わらせられたら、どんなに良いか。生産性を高めるためには、組織の上の人は、デザインという観点が欠かせない。自分の頭の中だけに頼るのではなく、学術的な成果や実務の叡智を積極的に活用すべき。
ということは、学習し続けなければならない。一緒に、学び続けましょうね。