セミナーや研修の講師を務めるときに、もっとも寂しいこと。あなたが社内や社外で研修講師としたときのことを思い出してみてください。それは、参加者に関心をもってもらえないことじゃありませんか。
講師を務めるボクらは、事前にしっかりと準備をしています。また、当日には一生懸命に話しています。これもそれも、参加者の役立つため。その目的のために、研修の時間をはるかに超えた検討や練習などを積み重ねてきています。にもかかわらず、それが報われないとしたら、寂しいかぎり。
もし、たった一言を添えることで、参加者に関心をもってもらえるとしたら、興味はありますか。たった一言で良いなら、試してみたいと思いますか。
その「たった一言」について、今日、ボクは大発見をしました。まだ仮説の段階ですが、あなたに共有したいと思います。
その大発見は、フィットネスクラブで、エアロバイクを漕いでいるときにひらめきました。今日、イヤホンで聴いていたのは、近藤真彦サン。「マッチ」の愛称で知られる、男性アイドル。デビューしたときから、ボクはマッチの大ファン。
ボクの好きな歌「ハイティーン・ブギ」を聴いていたときに、ふと、気づきました。「お前」や「俺」がやたらと歌詞に出てくることを。
そこで、歌詞にどれだけ頻出しているのかを調べてみたのです。もし、そこに何か特徴的なワードがあるのなら、使わない手はない。ベストセラー・コードならぬ、ベストリリック・コード。
1番の歌詞では、Aメロの1で「お前」、その2で「俺」たち、Bメロで「お前」と「俺」、サビで「俺」と「お前」。続く2番の歌詞では、1つだけのAメロで「お前」、Bメロで「俺」、サビで「自分」が2回。
ほら、多くないですか。で、デビュー曲であり、また、唯一にミリオンヒットの『スニーカーぶる~す』でも調べてみました。
1番の歌詞では、Aメロの2で「俺」、Bメロで俺とお前を含んだ「ふたり」、サビで「俺たち」が1つ。また、二人称としての「Baby」が6回。全体の文字に比較して用いられる割合は多い。
で、この『スニーカーぶる~す』に次に、同じ所属事務所でミリオンとなったのは、KinKi Kidsサンのデビュー曲『硝子の少年』。調べてみると、次のとおり。
1番の歌詞では、Aメロの1で「君」と「ぼく」、Aメロの2で「君」、Bメロで「ぼく」と「君」、サビで「me」と「君」。
2番の歌詞では、Aメロの1はなし、Aメロの2で「ぼく」、Bメロはなく、サビで「me」。
Cメロで「ぼく」と「君」。続くサビでは、1回目で「me」、2回目で「me」と「ぼく」と「君」。やはり、全体の文字から比べると、頻出しています。ちなみに、作詞はいずれも松本隆サン。
この分析から、売れる歌の歌詞には、「君」や「お前」といった二人称代名詞と、「僕」や「俺」といった一人称代名詞とが多用されているんじゃないか、という仮説を立てました。
このうち、二人称代名詞の効果は、広告の世界で知られた話。セールスレターで「あなた」を用いると、広告の反応は高まります。だから、二人称代名詞が用いられた歌を聴くと、「これは、私に向けて歌われている」と感じてもらえると推測できます。
だから、セミナーでも、「皆さん」と呼びかけるよりも、「あなた」と語りかけるほうが効果的だと言われています。このことはご存じかもしれません。
一方、一人称代名詞は、熱狂的なファンをいるアイドルだからこそ有効というのが、ボクの仮説。「僕」や「俺」という歌詞は、歌っているアイドルのこと。熱狂的に応援しているアイドルから「僕」や「俺」が、それを聴いている「君」や「お前」、つまりはファンに向かって語りかけている。こんなにキャーキャーする状況はない。
ただ、この一人称代名詞を発展させると、「僕ら」や「俺たち」となります。二人称代名詞も含めた表現です。これによって、二人の世界であることを明示することができます。ファンにとってはたまらない。
この仮説が真なら、ここぞという呼びかけで「私たち」を用いることで、参加者に自分ごととして感じてもらえる可能性があります。大ヒットした歌の歌詞で用いられた秘訣をセミナーや研修で活かすとするなら、「あなた」に加えて、「私たち」はこうする、こうすべきだと説明するのです。その結果、参加者をこちら側に巻き込み、かつ、同じ方向に向かってもらえることが期待できるのです。
もちろん、この仮説が成立するかどうかは、他の曲との比較や他のアイドルでの当てはめなども必要になってきます。AKB48でもチラリと確認したところ、売れている曲には「君」や「僕」が多い。ちなみに、AKB関連の作詞を手掛ける秋元康サンは、女性アイドルでも「僕」と歌わせる傾向が多いですよね。それはさておき。
そんな結果を統計的に算出するよりも、実地でトライアルしたほうがてっとりばやい。しかも、たった一言で良い。だったら、試す価値はありますよね。
マジックワードかもしれない「私たち」は、ボクも研修の場で試してみたいと思います。あなたも、ぜひ、トライしてみてください。だって、ボクらは、ただの講師ではなく、参加者の変容を促すファシリテーターですから。
もし、あなたがこんな呼びかけに大きく頷いたなら、仮説は成立したのかもしれません。今日のブログでは、一人称代名詞と二人称代名詞、また、「私たち」をふんだんに使ってみましたから。