Accounting

KAMと違ってCAMはシステマティックに決まる

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。)  

映画や小説で、「三部作」と呼ばれるものがありますね。ボクの大好きな馬場康夫監督によるホイチョイ映画は、『私をスキーに連れてって』(1987年)、『彼女が水着にきがえたら』(1989年)、『波の数だけ抱きしめて』(1991年)が初期の三部作。

 このブログでは、一昨日が「アメリカのCAMがイギリスのKAMと違うところ」、昨日が「KAMとCAMとでは、何にフォーカスするかが違う」と、KAM(カム:Key Audit Matters)とCAM(キャム:Critical Audit Matters)について話してきました。監査人が監査報告書に、フリーハンドで記載するアレね。

 というワケで、KAMとCAMについての三部作にしてみようと、今日もこれらをテーマにお話ししていきます。この時期にそんなマニアックな話を聞くと、2つの理解がより深まると思いますよ。

 CAMはアメリカの制度らしく、システマティックな流れで決定されていくのが特徴。イギリスや日本などのKAMでも絞り込んで決定していくプロセスはあるものの、CAMのほうが明確。

 そのことがわかるのが、2019年7月にPCAOBがリリースした「AUDIT COMMITTEE RESOURCE:Critical Audit Matters」という文書。監査委員にCAMを解説した資料です。ここに、CAM決定までの3つのステップが、フローチャートとして示されています。

 1つ目のステップは、監査委員とコミュニケーションしたか、または、コミュニケーションすべき事項かどうか。このチャートの始まりに該当しなければ、CAMになりません。

 監査委員とコミュニケーションした事項がCAM選定にあたっての母集団になるのは、KAMと同じ。何も話していないようなサプライズは起こさないように配慮されています。

 2つ目のステップは、財務諸表に対して重要な勘定か開示に関連する事項かどうか。この用件に該当しなければ、やはりCAMにはならない。

 一方で、KAMは、必ずしも財務諸表の勘定や開示に直接関連しません。実際、イギリスの事例では、ブレグジットの影響がKAMとして取り上げられているものもあります。こうしたレベルの事項は、KAMにはなっても、CAMにはならないのです。

 3つ目のステップは、特に困難な、主観的な又は複雑な監査人の判断を含む事項かどうか。こうした監査人の判断が含まれなければ、CAMにはならない。

 昨日のブログでも紹介したとおり、KAMとはフォーカスしているところが違うのです。KAMは監査のプロセスを示すことが目的のため、監査人の判断が含まれなくても監査資源を多く投入した事項がKAMとなることもあるからです。

 このように、アメリカのCAMは、フローチャートとして成り立つほどに、3つのステップがイエスかノーで判定していきやすいのが特徴。あくまでもKAMとの比較で、という意味でね。

 もちろん、イギリスや日本のKAMも、3つのステップがあります。まず、監査役等と協議した事項がKAM選定の母集団になり、次に、特に注意を払った事項を決定し、最後に、特に重要であると判断した事項を決定していきます。

 しかし、CAMのようには、イエス・ノーと明確に判断できるものではない。KAMはどう決定していくかというステップなのに対して、CAMはそうであるかどうかを判定していくからです。CAMが相対的にシステマティックだと言えます。

 さすがは、アメリカ。IFRSは解釈の余地が大きいとして、自国企業に適用させることを考えない姿勢が、こんなところにも現れています。確かに、フローチャートに適したステップは、解釈の余地は少ないですからね。

 KAMとCAMは知れば知るほど、違うものに見えてきます。同じような概念にしていくために、三部作のように3ステップで展開していくのが良いかと。「KAMをCAMに寄せてって」、「CAMがKAMに活かせたら」、「CAMの数だけKAMにして」と。お後がよろしいようで。

P.S.

日本におけるKAM早期適用事例の分析について、当ブログでは「財務報告の流儀」というシリーズ投稿で解説しています。ただ、ワンコインの有料コンテンツとして提供しているため、「お試し版」をこちらで用意しています。

P.P.S.

2020年3月期に早期適用されたKAMについて分析した結果は、拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説』にてご覧いただけます。まずは、こちらの紹介ページをご確認ください。

KAMとCAMとでは、何にフォーカスするかが違う前のページ

キャリアを歩むには、複数の選択肢を持て次のページ

関連記事

  1. Accounting

    本邦初公開、「シン・収益認識」

    シン・収益認識によって得られたものとは?あっ、「シン・収益認…

  2. Accounting

    海外KAM事例からの2021年3月期の決算留意事項

    こんにちは、企業のKAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。…

  3. Accounting

    機関誌『産業經理』への寄稿「気候変動の開示で会社法決算が不安定に」

    届きましたよ、手元に、寄稿した専門誌が。それは、2023年7月25日…

  4. Accounting

    収益認識で履行義務を「充足」する意味がわかる概念

    収益認識の新基準について、「とっつきにくい」という声を聞くことがあり…

  5. Accounting

    【掲載報告】あの論点が、想定外のかたちで取り上げられました

    2025年10月13日発行の週刊経営財務(No.372)のWEB限定…

  6. Accounting

    新型コロナウイルスと監査人の交代

    今から8ヶ月ほど前の2019年7月16日。このブログで「まだ騒がれて…

  1. FSFD

    3時間セミナーの開催「サステナビリティ開示の最前線」
  2. Accounting

    著者に会うときに、実行すべきこと
  3. Accounting

    有報・記述情報のアドバイザリー業務で用いているツール
  4. Accounting

    40年の沈黙を破れ!後発事象セミナーで「企業の説明責任」を果たす一歩を
  5. Accounting

    明らかになった! 2020年3月期のKAM早期適用事例
PAGE TOP