あれをしたい。これをしたい。そう思っている人も少なくないでしょう。
ただ、「何かをしたい」気持ちだけでは、それをし続けることができなくなる可能性があります。したい何かのために、したくない別の何かを強いられかねないから。
とはいえ、締切りがあるため、それを守らない訳にはいかない。クオリティと期限との間で悩むこともありますね。それが、現実的な問題かと。
ところが、その問題に対して、ハッキリとした態度を示した回答に出会いました。その回答者は、初の出版『読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術』(ダイヤモンド社)の著書である田中泰延サン。
彼は、サイト「ほぼ日刊イトイ新聞」でインタビューを受けました。その様子が記事「本当に、読みたいことを書けばいい?」として、7回にわたって掲載されています。そのうち、第6回目に次の回答があったのです。
しめきりというのは発注してるひとが
何月何日までにお金が欲しいから言うてるだけで、
自分が納得してない原稿を相手の都合で渡したら、
そこから人生ガタガタになります。
この発言には、自身の成果物に対するレベルを落としたくない、という覚悟があります。相手の言うままに、納得していないレベルで成果物を渡すことだけはしたくない。だから、そこだけは決して譲りたくない、というラインを決めているのです。
また、しなくない何を求める人ともかかわらない、つまりは一緒に仕事をしないとも話しています。それが、締切りであっても。
自分が締切りよりもクオリティを守りたいなら、クオリティよりも締切りを優先する人はどうでも良いのです。
ちょうど今、抱えている執筆も、当初、こちらが提示していた期限はとうに過ぎている。しかし、編集者は一切せっつくことはない。先日、別の件で会ったときに、「どうですか?」と様子を尋ねられましたが、決して「早く出せ」とは迫ってこない。
そのおかげで、ボクは成果物のクオリティを高めることに注力できています。当初のスケジュールを守ることを優先したなら、今、順次、仕上げている原稿のレベルには到達していなかったと断言できます。だから、今の編集者の距離感が心地よく、また、有り難い。感謝しています。
振り返ると、今までお付き合いしてきた編集者の大半は、せっついくるタイプではありませんでした。むしろ、ボクのほうが期限を定めることで、自らプレッシャーを与えていたほど。だから、著者人生としては幸せですね。
あなたも、何かしたいことがあるなら、何をしたくないかを決めたほうが良い。自分がしたいことを見守ってくれる人に出会うまで、徹底的に自身を磨くのです。あなたは今日、何を磨いたでしょうか。