Accounting

情報爆発で記述情報のことを調べきれない

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

情報爆発が会計の世界にも及んでいたと感じた今日。ほら、横軸を時間の経過、縦軸を情報量で示す図があるじゃないですか。調べてみると、あの図は、IT専門調査会社のIDCが2020年までの情報爆発を予想したもの。

 2000年までは地を這うようない低い勾配のラインで表現されています。2000年の時点では6.2EB(エクサバイト)だったようで。このエクサバイトは、TB(テラバイト)の100万倍。

 2000年以降に、情報量のラインは急激に上昇します。2020年には35ZB(ゼッタバイト)になると予想されているのです。ゼッタバイトとは、エクサバイトの1,000倍。この20年で、5,645倍に跳ね上がるラインとして表現されています。

 こんなに情報が急増すると、人はかえって情報を処理できなくなります。これは、経済学でいる価格形成理論とは反した状況。その理論では、すべての価格情報を手に入れられる状況において、最も合理的な価格を選ぶことを前提に構築されています。

 ただし、これは前提の話。現実とは異なります。実際には、複数の選択肢があると、人はかえって選べなくなるのです。似たようなメニューが3つだと、比較検討のうえで選ぶことはあるかもしれません。合理的な選択を行うこともあるでしょう。

 ところが、似たようなメニューが100もあると、とても比較検討なんてしていられない。つまり、合理的な選択を行うことを放棄してしまう。あなたも、ピンときたもの、最初に目に入ったもの、一緒にいた人が選んだものなどを選択した経験があるハズ。

 このように、情報がありすぎると、人は、その情報を吟味しなくなることが知られています。十分に検討しなくなる場合が現実にはあるのです。

 これ、会計の世界でも同じだと、今日、感じました。有価証券報告書の記述情報のことを考えていたときに、なかなか改正のきっかけとなったディスクロージャーワーキング・グループの報告書を読むこともなければ、その議事録や配布資料に目を通すこともない。

 その理由は、あまりにも多くの制度の新設や改正があるから。1990年後半の頃、会計士の先輩がつぶやきを今でも覚えています。その先輩は、こう話したのです。

「1年に2つも会計基準の変更があるなんて、どうかしてるよ」

 当時は、会計基準の新設や改正は、年に1度くらいのもの。それも随分と対応期間が確保されていました。あの頃は、信じられないほど、ゆったりと時間が流れていたものです。

 それが今では、1年に会計基準の変更が2つ程度じゃ、むしろ何も起きていないような感覚になるほど、多くの基準や制度の改正が頻繁に行われています。そのための準備期間に余裕がないこともある。いわば、情報爆発の状態。

 こんな状態のため、経理の人たちは、改正や新設された事項に対して、十分な検討時間をかけられなくなります。物理的にも、精神的にも。で、消化不良のまま、あるいは、消化できていないことに気づかないまま、決算を迎えてしまう。

 だから、改正や新設された事項について、ポイントを的確に教えてくれる人を求めます。自分の代わりに汗をかいてくれることを望む。

 その汗は、基準や指針を「ですます調」で置き換えた程度では許されない。それくらいは自身でもできます。それ以上のことを求めているのです。

 単にキュレーション的な解説ではなく、その中から必要な情報を厳選してくれることを。導入の背景を丹念に読み解いたうえで、わかりやすく、実務で使いやすく加工した情報を。

 記述情報への対応をまとめていくときに、そんなことを感じました。よって、セミナーや解説記事、解説本は、そこを意識して作られるべき。

 でも、そんな汗も、AIに置き換えられるかもしれません。経理の方々のスマホに、その人が必要とする情報をAIが選別して表示してくれるようになるから。しかも、その情報は、文字ではなく、動画となっているでしょう。

 あなたのスマホにボクの解説動画が現れる日は、いつでしょうか。

「おもてなし」精神の商法改正前のページ

KAMの資料がプロジェクトメンバーから褒められました次のページ

関連記事

  1. Accounting

    『「のれんの減損」の実務プロセス』の第3章を語る

    2022年7月に、『伝わる開示を実現する「のれんの減損」の実務プロセ…

  2. Accounting

    財務報告の流儀 Vol.028 四国電力、トーマツ

     文豪ゲーテが開示責任者なら、財務報告の流儀を求めたことでしょう。「…

  3. Accounting

    IFRSセミナーの備忘録

    こんにちは、企業のKAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。…

  4. Accounting

    寄稿「監査人交代時に企業が注意したいKAMのポイント」

    ついに、KAM(監査上の主要な検討事項)の分析記事が掲載されました。…

  5. Accounting

    睡眠からのビジネスのダッシュボード

    最近、周りにプッシュしまくっているのが、睡眠アプリ。寝るときに、スマ…

  6. Accounting

    JICPAのKAM分析レポート、ご覧になりました?

    こんにちは。KAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。KAM…

  1. Accounting

    あまり気づかれていない、四半期開示の行方の鍵
  2. Accounting

    コンテンツを充実させるワン・ステップ・ビヤンド
  3. Accounting

    新型コロナウイルスと上場廃止とKAM
  4. Accounting

    もう、制度会計に気候変動は関係ないとは言わせないセミナー
  5. Accounting

    対話を知らない経営者たち
PAGE TOP