最近、専門サービス業のビジネスモデルについて考える機会がありました。そのときに、世界的なマーケッターであるダン・ケネディ氏の教えが、ようやく腑に落ちた気がしたのです。今日、読んでいた本で、それを確信するに至りました。
読んでいたのは、『How Clients Buy 売り込まなくても仕事が取れる顧客心理7つの鉄則』(ダイレクト出版)。コンサルタントや士業の顧客獲得を説いた本です。顧客が専門サービスを購入するのは、信頼にある。そのために、自身の存在を認知してもらい、かつ、提供するサービスの内容を理解してもらうことに頑張ろう、と説いていました。
その根拠は、専門サービス業のセールスファネルが物販と異なるからだと言います。セールスファネルとは、まず見込み客を多く集め、次に一度購入してもらう既存客になってもらい、最後にリピートして購入する継続客になってもらうための一連の過程のこと。上に記載した見込み客から下に記載した継続客へと移行するほどに数が少なくなるため、これをファネル(じょうご)になぞらえて表現しています。
この本では、物販では見込み客は多いことから、こうしたセールスファネルにおける各局面の歩留まりを少なくすることが重要になると言います。これに対して、専門サービス業はそもそも見込み客が大量に存在するものではないため、少ない見込み客からの信頼を得るような活動を通じて、顧客を獲得すべきと主張します。
確かに、物販と専門サービス業とを切り分けたときには、この本の主張が当てはまるでしょう。実施する業務の性質が違うため、適切なアプローチが必要なことは否定するものではありません。むしろ、推奨すべきもの。
ただ、1点、見逃していることがあります。それは、専門サービス業を物販のように取り扱うことができるなら、セールスファネルのアプローチが有効になることです。これが冒頭でお話しした、専門サービス業のビジネスモデルのことなのです。
専門サービス業は、個別性が強いため、1対1の関係が基本となります。あるクライアントに対して、クライアントに合ったサービスを提供する。もちろん、複数のクライアントを抱えられるものの、個別性が強いがゆえに、1対Nの関係にはしにくい。だからこそ、今日読んでいた本のようなアプローチにならざるを得ない。
しかし、1対Nの関係が成立するようなサービス提供ができれば、セールスファネルのアプローチを活用できます。たとえ提供するサービスのすべてを1対Nにすることはできなくても、その一部分であったり大部分であったりを1対Nにできれば、ビジネスモデルを大きく変革することができます。
ダン・ケネディ氏は、売上を作るのではなく、顧客を作るのだと話しました。1対Nのビジネスモデルであれば、提供するサービスは1つで済むため、顧客を増やせば増やすほどに売上も利益も伸びていきます。最近のサブスクリプションの成功例は、こうしたビジネスモデルに他ならない。
これに対して、1対1のビジネスモデルでは、顧客を増やして売上を伸ばしても、同時にコストも比例して増えていく。提供するサービスのコストを適切な価格で調達できる保証がなければ、利益は圧縮され、最悪、赤字になります。また、どこまでスケールできるかにも影響を与えます。
そう考えると、1対1から1対Nへとビジネスモデルを変革させていくことが非常に重要になってきます。このときに、普通に机を前にして腕組みしながら考え込んでも、イノベーションを生み出すアイデアは得られにくい。然るべき方法論が必要とされます。
となると、イノベーションを生み出すファシリテーションができることが、実は最強になってきます。だからボクは、2020年も引き続き、アイデアが活発に生まれるファシリテーションを地道に実践していきますよ。