今日の2020年2月28日、新型コロナウイルスの感染への対応はすごいところまで行きました。日本政府が、全国の小中高校に臨時休校を呼び掛けるまでに至ったのです。その期間は、3月2日(月)から春休みに入るまで。
その是非は他に譲るとして、教育業界のビジネスモデルとして注目したいのは、「チャネル」という要素。教育という価値を提供するための方法や手段、ルートのこと。従来、日本の学校教育は対面の授業を提供することがメインのチャネルでした。
しかし、今回のような事態となると、唯一と言ってよいチャネルは封じられてしまいます。その結果、教育を生徒に提供することができなくなる。だから、臨時休校にまで至ってしまうのです。
これに対して、同じコロナウイルス対策でも、中国政府は国民に対して外出を控え自宅で過ごすよう呼びかけているものの、学校を臨時休校にはしていません。全国規模のクラウド学習プラットフォームを立ち上げたうえで、小中高生向けの授業を放送し始めたといいます。
クラウド環境を確保することによって、たとえ学校が閉鎖されたとしても1億8000万人の児童・生徒が学習を続けられるようにしました。つまり、1つのチャネルがダメなら、別のチャネルを用意する。これによってビジネスモデル的には、教育という価値の提供が止まることのないように対処している。
日本でこうした対応を行うには、ネット配信といったチャネルを立ち上げなければならない。これを小中高校の先生だけで行うには、リソース的にもアクティビティ的にも限界があります。となると、他の誰かの協力を得なければならない。それは、ビジネスモデルの要素でいうところの「キーパートナー」。
今回の件では、小中高校にとってキーパートナーを見直す時期。そこで、キーパートナーを見直すタイミングを、次の3つに整理してみました。
1点目は、こちらの価値提供に合わなくなったとき。これには、先方都合と自社都合とに大別できます。
先方都合とは、例えば、自社との契約を打ち切られたようなケースが挙げられます。これは否が応でもキーパートナーを見直さなければなりません。
また、こちらの価値提供に必要となる先方からの価値提供が途絶えたり、脆弱になったりとするケースも挙げられます。自社の製品を作るにあたって不可欠な原材料をキーパートナーから調達していたときに、これを調達できなくなると困ってしまいます。他を当たらなければなりません。
一方、自社都合とは、自社が提供する価値が少し変わってしまったために、価値提供に対するキーパートナーの後押しが弱くなったケースが挙げられます。例えば、キーパートナーの人気で集客していたところ、その人気が落ちてきた場合がそう。
キーパートナーを見直す時期の2点目は、コストが見合わなくなったとき。キーパートナーに支払う報酬や料金が高くなると、こちらの採算が悪化することがあります。それを売上に転嫁できれば良いのですが、それが叶わないなら、自身の利益を削ることになる。
それでも、まだ利益があれば救われますが、最悪、損失となるケースもあるでしょう。もっとも、その損失を広告費の範囲内として捉えられるなら、関係を継続する選択肢もあるかもしれません。ただ、そのキーパートナーからもたらされる効果は慎重に検討しなければならない。
キーパートナーを見直す時期の3点目は、自社のキーリソースやキーアクティビティをキーパートナーとするとき。あるいは、新たなチャネルやカスタマーリレーションシップにあたってキーパートナーが必要なとき。これらを簡単にいえば、外注化。
自社のリソースを使う、あるいは、自社が活動を行うよりも、外部の者に変わってもらったほうが価値提供の品質が向上する、もしくは、価値提供に要するコストが低減するならば、外部に委託することに経済的合理性があります。
ちなみに、日本の小中高校が授業をネット配信するために従来のビジネスモデルを見直すときには、3点目。ネット配信をサポートしてくれるキーパートナーが必要なときだから。
全国規模のクラウド学習プラットフォームまで行かなくても、セミナーや研修の業界では安価で容易にオンライン講座を提供するための知見があります。これを機会に授業をネット配信できる環境を作ることができれば、ウイルス対策の他にも尋常ではない大雨や台風といった通学できない事態にも対処できます。
そんな環境を整えるために、どなたか立ち上がりませんか。学校の先生が本気でサポートを求めるなら、必ず手を差し伸べてくれるキーパートナーがいるはずですから。