未来は一体、どうなるか。その未来に備えて、何をすべきか。新型コロナウイルスもあるため、このように先行きに不安を覚える人も多いかもしれません。
しかし、未来を予測するのは間違い。なぜなら、こんなに不確実な世の中では予測そのものがムリだから。
そう説くのは、著作家の山口周サン。著書『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』(ダイヤモンド社)の中で、複雑で不透明な世界で、誰かの予測に基づき傾向と対策を考えるのは、古い考え方だと一蹴します。
◎ 未来は予測するものではない
実際、これまでも未来予測は重要な局面ほど外れています。また、予測し得ないことに対処したいために未来を予測すること自体に、そもそもの矛盾を抱えています。
今の世界は、過去の人たちの意思決定が集積して出来上がったもの。ならば、未来は、今の人たちの意思決定が集積して出来上がる。つまりは、未来とは、構想する世界を実現するために行動を起こした結果なのです。
このように、未来は予測するものではなく、望む世界へと実現させていくために仕掛けていくもの。受動的に対処していくような姿勢ではダメ。むしろ、周囲を巻き込みながら主体的に選んでいく姿勢であるべきなんです。
◎ 財務報告なら記述情報を充実すべき
これを財務報告の文脈で考えてみます。近年の有価証券報告書の前半部分に関する各種の改正は、財務報告の利用者すなわち投資家との対話をより促すことを目的としています。
すると、構想する未来とは、対話が促進される開示となります。これを実現するために仕掛けていく、つまりは、記述情報を充実することが求められています。
ボクの造語でいえば「ダイアローグ・ディスクロージャー」。財務報告の利用者との対話が促進されるよう、経営者の想いを記述情報の充実によって届けること。
現状では、経営者の想いはあります。また、それに基づいた企業活動もあります。さらに、その結果としての財務諸表も出来上がっています。記述情報として記載すべき素材は揃っています。あとは、それを書くだけ。
◎ ライティング・スキルを高める必要性
この「書く」という行為は、より理解される形にするには一定のスキルが求められます。理解されなくてもよい、あるいは、誤解されてもよいなら、ただ書くことで済みます。
しかし、それでは経営者の想いは財務報告の利用者に届かない。だから、想いを表現できるライターが必要となります。
とはいえ、より理解されるためのライティング・スキルを持った人が、必ずしも社内にいるとは限らない。財務報告のための文才を買われて採用された場合や、書くことを学んできた場合を除けば、これから社内で培わなければなければならないスキル。
それは、経営者の想いを傾聴し、事業セグメントの活動に関する情報を集め、財務諸表で表現された内容を踏まえ、記述情報として完成させるライティング・スキルです。
◎ 「ディスクローズ・ライティング」の時代
このようにダイアローグ・ディスクロージャーを実現するためには、財務報告のためのライティング・スキルを高める必要がある。「ディスクローズ・ライティング」と呼べるスキルを。
記述情報の担当者はこのスキルを身につけるか、あるいは、これを身につけた専門家を利用するかに迫られているのです。
ダイアローグ・ディスクロージャーを叫んでいるボクとしては、このディスクローズ・ライティングについても手当しないといけませんね。ちょうど、昔のブログでシリーズ化していた「財務報告ライティング」は、そのTIPSとして活かせます。
それにしても、あの頃から、財務諸表のみならず財務報告までも考えていたことを再発見しました。これも、未来を「予測」していたのではなく「構想」していたから。
そのうち、財務報告のアドバイザリー業務も普通になっているでしょう。あっ、「でしょう」なんて予測してはいけませんね。その実現に向けて仕掛けていかないと。というわけで、顧問契約やアドバイザリー契約をお求めの方は、ご一報ください。