今日、例の研修動画をチェックしました。そう、昨日のブログ「見積り開示についての、悔しいほどに最高のテキスト」で紹介した、JICPAで開催された研修会「2021年3月期決算直前セミナー ~会計上の見積りの開示~(その1)」のこと。
それを視聴して思ったのは、その道に通じている人は皆、同じことを考えている、ってこと。
2部構成の研修動画
この研修は、2部構成となっています。動画ファイルはひとつのため、視聴はワンクリックで大丈夫、、、のはず。実はTeamsを使い慣れていないため、文字通りのワンクリックではありませんでした。
前半は、ASBJの副委員長による「会計上の見積りの開示 ~企業会計基準第31号の解説を中心に~」。会計上の見積りに関して、全般的に説明されています。短時間でポイントが押さえられるため、基本を理解するには最適。
続く後半は、PwC京都監査法人の山田善隆サンによる「開示例から見る『会計上の見積りの開示に関する会計基準』適用上の判断のヒント」。その研修資料について、昨日のブログでは猛烈にオススメしました。
その研修動画を実際に視聴したところ、事例分析の解説を聞いていて感じたのは、冒頭のとおり、「その道に通じている人は皆、同じことを考えている」ということ。
主要な仮定の記載の仕方
それは、会計上の見積りの内容について、財務諸表利用者の理解に資するその他の情報のところ。
企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」の第8項には、「その他の情報」について、次の3つが例示されています。
- 金額の算出方法
- 金額の算出に用いた主要な仮定
- 翌年度の財務諸表に与える影響
このうち、2番目の「金額の算出に用いた主要な仮定」に関して、感応度分析について事例の紹介ともに言及されていました。感応度分析とは、カンタンにいうと、金額の算出にあたって重要なパラメーターが増減したときの影響度合いを試算するもの。
感応度分析はご存知でしょうか
この感応度分析は、ボクも以前から、企業の方々に向けて取り組むべきだと主張してきたもの。当初は、重要な会計上の見積りに関する記述情報として、最近では「会計上の見積りの開示に関する会計基準」への対応として有効だと提案しつづけています。
なぜなら、感応度分析こそが見積り開示の突破口だと考えているから。これは、財務報告の利用者はもちろんのこと、作成サイドである企業にとっても有益なんです。
というのも、財務諸表に会計上の見積りを反映させるときには、たったひとつの金額でしか計上できないから。期待値や頻出値はあるものの、ひとつの数値に収斂しなければならない。複数の金額を同時に計上することはできませんものね。
そんなときに、複数の金額を、しかも幅をもたせた金額を開示できるなら、企業としても会計上の見積りに関する安全度を示すことができます。それによって、財務報告の利用者に対して誤解を抱かせずにも済みます。もう、良いことづくめ。
感応度分析について解説した2冊の本
ただ、財務報告という観点から感応度分析を解説したものがありません。そこで、『ダイアローグ・ディスクロージャー -KAMを利用して「経営者の有価証券報告書」へとシフトする-』では、この感応度分析を見出しとして解説を行いました。
この本の第5章の「3.感応度分析」がそれ。そこでは、日本企業における優良な開示例について、そのポイントともに紹介もしています。
また、『事例からみるKAMのポイントと実務解説―有価証券報告書の記載を充実させる取り組み―』では、KAMのみならず、注記事項や記述情報で開示された感応度分析についても解説を行っています。
2020年3月期の上場企業における優良な開示例も合わせて紹介しています。
では、あなたなら、会計上の見積りに関する主要な仮定として、どんな感応度分析を開示するでしょうか。ぜひ、考えてみてください。
P.S.
2021年3月22日に、「見積り開示会計基準のフォーマットを予想する」という記事で、開示のフォーマットについて提案しています。こちらも、どうぞ。
続編は、ブログ記事「減損会計で、見積り開示会計基準「その他の情報」はこう書く」として投稿しています。合わせて、ご覧ください。
P.P.S.
Twitterで、見積り開示会計基準への対応についてつぶやいたときに、思いの外、反響があったため、急遽、関連資料をリリースすることとしました。ご興味のあるかたは、こちらから入手してください。