こんにちは、企業のKAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。
いやいやいや、KAM(監査上の主要な検討事項)の適用状況について慌ただしてくなってきましたよ。早期適用の事例を調べていく中で、強制適用の事例が登場していたから。
今日の2021年5月31日は、2021年2月期の企業における有価証券報告書の提出期限。そのため、KAMの早期適用事例の有無が判明します。
しかし、事態はそれだけに収まりません。なんと、2021年3月期の強制適用の事例も登場しているため。しかも、先日のブログ記事「KAM強制適用の第1号が、ついに登場」で紹介した事例以外にも登場しています。そう、早期適用と強制適用とが混在しているのです。
そこで、KAMの早期適用と強制適用の状況について、EDINETで調べた結果をシェアしますね。
2021年2月期の【早期】適用の結果
お知らせするのは、2021年5月31日の17時20分時点の調査結果です。というのも、ブログ記事「有価証券報告書の提出期限とKAM早期適用」で説明したとおり、EDINETで書類を提出できるのは、原則として、平日は17時15分まで。17時20分なら、当日の提出分は漏れなくカバーできるかと期待できます。
その結果は、、、ゼロでした。残念ながら、2021年1月期と同じく、KAMの早期適用事例は登場しませんでした。
残すは、3月の月中に決算日を迎える企業ですね。上場企業でも20社近くありますので、それをチェックすれば、早期適用の全貌が明らかになります。どこまで実績が積み上がるのかが楽しみです。
2021年3月期の【強制】適用の事例
次に、2021年3月期のKAM強制適用の事例です。先日のブログで紹介した第1号に続いて、第2号が登場しました。
こちらも定時株主総会が2021年5月28日に開催されています。ただし、有価証券報告書の提出が週明けの2021年5月31日となったため、強制適用の第2号となりました。
(1)事例
- 証券コード 7908
- 会社名 ㈱きもと
- 業種 化学
- 開示書類 有価証券報告書
- 決算日 2021年3月31日
- 監査法人 太陽有限責任監査法人
- 会計方式 日本基準
(2)強制適用によるKAM
連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 繰延税金資産の回収可能性について
個別財務諸表の監査報告書に記載されたKAM
- 繰延税金資産の回収可能性について
(ただし、連結のKAMと同一内容であるため、記載を省略する規定が適用されている)
注目すべきは、会計上の見積りに関する主要な仮定です。将来の事業計画における主要な仮定として、国際的な経済状況に基づく「受注環境の見込み」と「原材料価格の変動の見込み」の2点を挙げています。
当期から財務諸表の注記事項として必須となる「重要な会計上の見積り」では、KAMの見出しと同じく、「繰延税金資産の回収可能性について」が取り上げられています。将来の事業計画における主要な仮定として、KAMで挙げられた2点が説明されているため、企業と監査人との認識が揃っています。しかも、個別具体的に記載されているため、優良事例として評価されるものと考えます。
いや~、KAMのみならず、見積り開示会計基準の事例もこのタイミングで登場しています。監査人による会社法の監査報告書日が遅めの企業では、こうした事例が役立ちますね。
もちろん、2020年3月期のKAM早期適用の事例を取り扱った拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説―有価証券報告書の記載を充実させる取り組み―』でも、見積り開示会計基準に対応できるよう解説していますよ。よければ、お手にとって見てください。
P.S.
2020年3月期に早期適用されたKAMについて分析した結果は、拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説』にてご覧いただけます。まずは、こちらの紹介ページをご確認ください。
P.P.S.
見積開示会計基準に関する徹底解説について、書籍『伝わる開示を実現する「のれんの減損」の実務プロセス』でおこないました。こちらもご覧ください。