改訂版コーポレートガバナンス・コードへの対応、進んでいらっしゃいますか。
東証の規定によれば、遅くとも2021年12月末日までに変更後のコーポレートガバナンスに関する報告書を提出しなければなりません。そこで、上場企業の担当者は、改訂内容に基づきながら、「これはコンプライ」「あれはエクスプレイン」と振り分けながら、対応を検討されているところでしょう。
今回の改訂内容のひとつに、サステナビリティを巡る課題への取組みが挙げられます。サステナビリティの内容が具体的に例示されました。その真っ先に挙げられているのが、気候変動という言葉。
会計の世界にいると、この気候変動がなぜ、ここまで取り上げられているのか、ピンと来ていない方もいらっしゃるかもしれません。多様性についても同じように、財務情報への影響がフワフワとしていることもあるでしょう。
特に、コーポレートガバナンス・コード対応の支援業務として、会計士が関与するケースも十分に想定されます。このとき、オススメの研修があります。それは、JICPAのオンライン研修です。
感動のオンライン研修
そのタイトルは、「組織内会計士研修会 ポスト・コロナ時代を生き残れ! ESGに配慮したサステナブル経営の推進」。2020年9月4日と1年前の開催ではあるものの、もちろん、今でも十分に、いや、十分すぎるほどにESG情報の重要性が理解できる内容です。
この研修のうち前半の「ESG 投資/SDGs はなぜあれほど話題になっているのか?」を解説されているのは、株式会社ニューラル代表取締役CEOの夫馬賢治サン。サステナビリティ・ESG投資に関するニュースサイト「Sustainable Japan」も運用されています。
ボクはこの研修で、夫馬賢治サンを初めて存じ上げたのですが、とにかくオススメ。これでもか、というくらいにデータを提示しながら、否が応でもESG投資の重要性が理解できる研修内容となっています。
気温上昇で損害保険が成立しない
中でも衝撃的だった内容は、4℃温暖化したら損害保険が成立しない、という話。つまり、このまま温暖化を放置していると、保険がかけられない世界に突入してしまうと、海外の保険会社がリリースしているのです。
これは、不動産の物理的なリスクが高まることを意味します。実際、海外では、具体的な企業名を挙げて不動産の物理的なリスク評価のデータが公表されています。そこには日本企業の名前も挙がっています。
だから、ダボス会議をはじめとして世界は気温の上昇を留めようとしているのです。ここで未知の技術の登場を待ってはいられないため、既存の技術をコントロールしようとする。温暖化を進めるような技術やビジネスには投資を行わず、その反対に温暖化をとどめるような技術やビジネスにお金が回るようにしています。これが、ESG投資。
英文開示をしなければESG投資の土俵に立てない
ここで、英文開示の重要性が理解できる話も登場します。ESG投資にあたって評価を行う機関があります。このESG評価機関によるデータに基づき、インデックス開発会社がインデックスを運用会社に提供します。
この流れのスタートであるESG評価機関は、英語情報しか取り扱わない。いくらESG開示を進めたところで、英語で開示していない限り、世界にESG情報が流れない。ESGの取り組みが行われていないものと同然なのです。
コーポレートガバナンス・コードで海外投資家の比率が低いとか言っていられません。そもそもESG投資の土俵にすら立てないのです。英文開示をしなければ、ESG投資という世界の波に乗れないことを踏まえたときに、海外投資家の比率うんぬんは極めて狭い世界での話だということが理解できます。
こうして時間が経つのを忘れるほどに、研修は進んでいきます。それにしても、JICPAのセミナーはすごい講師を呼びますね。会員で良かったと、ボクは大いに満足しました。
もし、あなたが会計士で気候変動などの財務影響が腑に落ちていないなら、このセミナーを受講することを強く、強く、強くお勧めします。
今回の講師を務めた夫馬賢治サンは、調べたところ、現在、3冊の本を出版されています。これはもう、チェックしないなんて話はありませんよね。
こちらが、2020年4月に発売された第1作目『ESG思考 激変資本主義1990-2020、経営者も投資家もここまで変わった』です。