Accounting

他にはない、2021年3月期のKAM分析

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

こんにちは、企業のKAM対応のスペシャリスト、の竹村純也です。

2021年3月期のKAM(監査上の主要な検討事項)について、分析した記事が掲載されました。

もともと、2021年6月から、KAMの分析を進めていました。KAM対応のスペシャリストを名乗るからには、強制適用の状況を把握しておかなければなりませんからね。

そうした中、今回の企画のお話しがありました。執筆にあたってリクエストがあった事項に基づき、分析し直してみると、内容が深くなりました。それは、他のKAM分析では指摘されていません。まさか、あんな結論になるとは。

 

復活した「決算開示のトレンド」

そんなKAM分析が掲載されたのは、会計専門誌『企業会計』の2021年12月号です。今月号の特集は、「決算開示のトレンド2021」。2021年3月期の決算について振り返る内容です。

 

この企画の意図については、㈱中央経済社「企業会計」編集部サンの非公式アカウントによるツイートが最もわかりやすいので、紹介しますね。

 

特集記事全64ページのうち13ページ

特集記事は、次のとおり、総論と各論に分かれています。

<総論>

  • 監査人からみた2021年3月期開示
  • アナリストからみた2021年3月期開示

<各論>

  • 会計上の見積り
  • 会計方針の変更
  • 役員の報酬
  • 監査上の主要な検討事項(KAM)
  • 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD

 

ホラ、なかなか興味深いテーマが並んでいると思いませんか。企画段階で、各論のテーマが知らされていたため、いち読者として早く発売されないものかと首を長くして待っていました。そんな各論のひとつが、KAM。そう、ボクが担当したテーマです。

企画の段階から、「ページ数が多くなりそう」とお伝えしていました。KAM事例も紹介することがリクエストのひとつだったからです。実際の監査報告書でも、1つのKAMを報告するのに、A4サイズの紙面を1枚使うことが少なくないため、3つほど取り上げただけで3ページも使ってしまいかねない。

そこは、編集担当者から、心強いお返事が。「なんとかなります」と。その言葉を信じて遠慮なく執筆していたら、とんでもないボリュームに。慌てて事例を厳選し、文章も削ぎ落とし、注書きを活用し、なんとか収まりそうな感じに仕上げました。

そのためか、KAMだけページ数が多かったです。特集記事の総ページが64ページのため、総論と各論を合わせた7項目の単純平均は、9.14ページ。それにもかかわらず、KAMは13ページの紙面を頂戴しました。

これでも相当に圧縮したのですが、KAMについては伝えたいことがありすぎて。

 

寄稿「監査上の主要な検討事項(KAM)」の構成

で、KAMについての記事は、次の構成としています。

 

はじめに

Ⅰ 2021年3月期におけるKAMの概要

 1 調査の方法

 2 KAMの数

 3 KAMの内容

 4 手続の結果、主要な見解

 5 会社法における任意適用

Ⅱ 新型コロナウイルス感染症に関するKAM

 1 想定した状況

 2 日本における新型コロナウイルス感染症関連のKAM

 3 影響度合いの認識が相違する場合

Ⅲ その他の各論

 1 固定資産の減損に関するKAM

 2 繰延税金資産の回収可能性に関するKAM

 3 早期適用されたKAMの2年目の状況

おわりに

 

中でも、オススメは、「Ⅱ 新型コロナウイルス感染症に関するKAM」です。他のKAM分析とは結論が180度違うかと。結論が違う原因は、明らかです。それは、ボクのKAM分析は、KAMだけを対象にしていないため。

KAMだけを対象にした分析では、KAMとした事項は正しく選定されているという前提があります。例えば、のれんの減損に関するKAMが報告されていた場合、被監査会社の財務諸表において監査上、特に重要だと判断した事項が「のれんの減損」であることに間違いないと。

しかし、ボクはそこから真偽を問うために、企業の開示と照らし合わせています。企業の開示で重要とされた事項がKAMと整合しているのか、企業の開示では重要視されていない事項がKAMとして決定されていないか、とKAMの決定プロセスから検討をしているのです。

なぜなら、これこそがKAM協議の状況がつかめる情報だから。企業と監査人の認識が共有されているからこそ、両者が重要な事項に資源を投入できるのです。その結果、重要な事項に十分かつ適切な検討が行われるため、財務報告の品質が高まります。

そこで、2021年3月期の決算では、新型コロナウイルス感染症の影響について、企業と監査人との認識が一致しているかどうかを探りました。2020年3月期から1年を経過した決算において、その影響が落ち着いた企業もあれば、そうでもない企業もあります。果たして、KAMは、財務諸表監査は、企業が置かれた状況を適切に把握したうえで取り組まれていたのか。

こうして、2021年3月期の決算でそれが最も明確に出る論点として、新型コロナウイルス感染症の影響を取り上げています。また、KAMのみならず、企業の開示も含めた分析を行いました。企業の方々も、監査人の方々も、ここに気をつけないと外部から突かれかねませんからね。

というワケで、ぜひ、ご一読ください。

 

P.S.

今日の話、ご興味、ありますか?

もし、あなたが、ちょっとしたKAMの注意点を知れば、外部から突っ込まれない財務報告を行えるようになります。

今回の記事の内容も一部含んだKAMセミナーをWEB受講できる機会があります。

気になった方は、こちらをクリックしてみてくださいね。

 

P.P.S.

KAMについて分析した結果は、拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説』にてご覧いただけます。まずは、こちらの紹介ページをご確認ください。

 

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