「こんなKAMの場合、ここの書き方はどうなるのでしょうか」
これは、研修を受講された方からの質問。たった一枚のチャートと数分の解説しかないにもかかわらず、具体的な実務展開をイメージしてもらえたようです。
昨日の2022年2月24日に、JICPAの千代田会でKAM研修の講師を務めてきました。研修のタイトルは、「KAMをめぐる会計上、監査上の課題-わが国におけるKAM分析の第一人者による解説-」。公認会計士を対象としたものです。
そこで今回は、KAM実務が具体的にイメージできた研修のお話しです。講師としてホント楽しかった研修だったため、ぜひ、続きを読んでみてください。
研修の内容
この研修は、夜の部に開催されました。18時30分から20時30分までの2時間。日中の業務を終えての参加。業務が長引いたのか、研修開始後にも駆けつけていただいた方々もいらっしゃいました。そこまでしてKAM研修にご参加いただいているため、研修単位の取得が目的ではなく、純粋にKAMのことを学びたいことが目的かと推測されます。
研修資料は、最近の寄稿の中から、次の2点をベースに構成しました。単に合体するのではなく、リスクに着目することを一貫として伝える内容です。
- 「決算開示のトレンド2021 監査上の主要な検討事項(KAM)」『企業会計』(2021年12月号)
- 「英国事例から学ぶ 適用2年目以降のKAM対応の留意点」『旬刊経理情報』(2022年2月20日号)
もちろん、紙面の都合で掲載しなかったデータも盛り込んでいます。また、研修資料には掲載していないものの、その場で話す内容は、気候変動の会計と監査への影響にも及びました。さらには、「その他の記載内容」の手続がいかに外堀りを埋められたような状況になっているのかについても、随所に散りばめた結果となりました。
その結果、受講された方々は、寄稿の内容以上のものを持ち帰ることができたのではないでしょうか。気づき事項が多ければ嬉しいです。
一枚のチャート「ライティングとしての構成」
そんな内容の研修で、「ライティングとしての構成」という3枚のスライドを用意しました。1枚目は、優良なKAM事例の構成パーツを示したもの。2枚目はそのとおりに記載された減損に関するKAM事例を、3枚目は繰延税金資産の回収可能性に関するKAM事例を紹介したもの。そのため、解説そのものは、1枚のスライドしかありません。
また、この3枚のスライドは、当初、掲載する予定はありませんでした。口頭での説明で済まそうと考えていたもの。しかし、一枚のチャートとして構成パーツを示したほうが、研修の中で話していることがより理解できるため、研修資料の提出間際に急遽、追加しました。
元々、スライドを使って解説しようとは考えていなかったため、解説する時間も計算に入れていません。こうした背景があるため、おそらく3分も説明していないでしょう。果たして、このスライドの内容が受講者に伝わるのかどうかと、実は心配していた唯一の箇所でした。
研修後も続く質疑応答
しかし、そんな心配は不要でした。その証拠が、冒頭の質問です。研修の終了後、個別に質問された方のおひとりから、構成パーツのスライドに関する質問があったからです。この内容が伝わったからこそ、実際に実務に適用するあたって気になる点が浮かんだのです。
質問を受けたことで、このスライドを急遽、追加して良かったと安心しました。会計士向けにKAM研修をする機会があったら説明しようと、2020年の7月頃から温めていた甲斐がありましたよ。また、伝えないことも伝わった実感も得られました。
そうそう、研修後、資料を追加で持ち帰る方もいらしたようで、この価値を感じていただいたことが嬉しいですね。また、Twitterで研修の感想を熱くツイートしてくださった方もいらっしゃいました。思わず、返信しちゃいましたよ。
こうした双方向のやりとりが充実するため、リアルの場での研修は楽しいったら、ありゃしない。おかげさまで、自宅に戻ってからも、充実感や幸福感が続きました。ここまでの感覚は、コロナ禍になってからの研修では初めてかも。ご参加くださった方々や、研修開催を実現していただいた千代田会の関係者には感謝しかありません。
次回の開催を決めるのは、あなた
今回の研修は録画されていないため、昨日、受講していない方々にとっては、もはや視聴する機会がありません。研修中に紙面やブログでは書けない話もしましたが、研修資料を入手しても、それを知ることはできません。
「え~、めっちゃ興味ある~~」と関心が高くても、あいにく、会計士向けのKAM研修について、次の開催は現在、予定されていません。ご希望されるときには、所属する地域会で企画して、お声掛けください。どこへでも飛んでいきます。
それまでに、「ライティングとしての構成」の解説を充実しておきますね。なんなら、講師ではなくファシリテーターとして、KAMの作成をその場で行うワークもセットしますか。おお、それなら、いっそ、KAM作成ワークショップが良いかも。って、研修のネタは付きませんね。
P.S.
KAMの分析は『事例からみるKAMのポイントと実務解説―有価証券報告書の記載を充実させる取り組み―』で多くを網羅していると思いますので、ご活用いただけると嬉しいです。
P.P.S.
会計専門誌「旬刊経理情報」に、英国のKAM事例を中心とした寄稿を行っています。現在、4本の寄稿で、図表を除く本文の文字数が、ざっと45,000字。説明を追加すると、6万字超えかな。ちょっとまだ、単行本にするには足りないだろうな。頑張ろっと。