後発事象の本をお求めになるのは、多くの場合、開示後発事象の注記について調べたいからでしょう。実際、前著『後発事象の実務』では、「あの記載例が役立った」とのコメントをお寄せいただきました。
前著では、開示後発事象の記載例を収録するにあたって、執筆当時の直近3年間の注記を分析したうえで、頻出する事象を選定していました。また、選定した事象については、過去10年近く遡って記載内容を分析することで、開示にあたってのポイントを整理していました。
今回、前著を10年ぶりに全面刷新した『後発事象の会計・開示実務』では、後発事象の【決定版】かつ【完全版】を目指すため、より多くの、かつ、役立つ事例を収録したい。また、開示後発事象の章は本書の目玉になるとも想定しました。そこで、開示後発事象の記載例を全面的に見直しました。
例えば、 執筆を開始する前に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う後発事象についてセミナーで解説していたため、パンデミックに関する開示後発事象の考え方を示すとともに、記載例として「休業要請に関連した営業店舗の休業」を収録しました。
また、執筆が終了した原稿が印刷所でゲラとして刷り上がったのが、2022年4月のこと。この時点で、ロシアのウクライナ侵攻が始まっていました。この影響を受けている会社さんに関わっていたことから、国内外の開示状況を調査・分析していたため、急遽、戦争に関する開示後発事象の考え方を整理したうえで、記載例として「戦争の勃発による事業の撤退」も収録しました。
このように、開示後発事象の記載例を幅広く掲載しようとチャレンジしたものが、『後発事象の会計・開示実務』の第4章です。具体的には、次のような事例です。
1.開示後発事象の注記の作り方
2.株式の取得による子会社化(企業結合・取得)
3.連結子会社の吸収合併(企業結合・共通支配下の取引等)
4.連結子会社における事業譲渡(事業分離における分離元企業)
5.地震による損害の発生(火災事故、浸水による損害の発生に関する記載例を含む)
6.重要な訴訟事件の発生(被告側)
7.重要な訴訟事件の解決(被告側)
8.債権の取立不能のおそれ
9.自己株式の取得
10.自己株式の消却
11.譲渡制限付株式報酬制度の導入(株式報酬型ストック・オプション(新株予約権)の発行、株式付与ESOP信託の導入に関する記載例を含む)
12.重要な子会社の設立
13.重要な設備投資計画の決定
14.社債の発行(社債の発行に関する包括決議に関する記載例を含む)
15.投資有価証券の売却
16.休業要請に関連した営業店舗の休業
17.固定資産の譲渡
18.希望退職者の募集
19.多額な資金の借入
20.資本準備金の額の減少および剰余金の処分(資本金の額の減少に関する記載例を含む)
21.子会社の解散
22.子会社株式の譲渡
23.戦争の勃発による事業の撤退
24.開示後発事象の実務対応
前著『後発事象の実務』に収録した事象についても、当時から10年近くが経過していたため、開示状況を改めて調査・分析しました。その結果として、解説の仕方を見直すとともに、記載例の一部を見直した箇所があります。そのため、最新の実務慣行を踏まえた開示が実現できるでしょう。
そうそう、気候変動の開示が高まっていることから、物理的リスクの顕在化に備えて、「火災事故の発生」や「浸水による損害の発生」関する記載例も用意しました。
他の追随を許さない勢いの、後発事象の【決定版】かつ【完全版】を標榜する『後発事象の会計・開示実務』。ぜひ、今時点の開示後発事象の記載例をご活用ください。