Accounting

機関投資家の次なるアクションが気になる「気候変動の会計と監査」

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。)  

会計の実務書に「気候変動」の言葉が登場してから、どれくらいの月日が経ったでしょうか。

その答えは、2022年10月11日現在で、まだ3ヶ月。

ちなみに、その会計実務書とは、拙著『「のれんの減損」の実務プロセス』(中央経済社)のこと。第6章「気候変動が減損に与える影響」として、一章分丸々と解説しました。

この本では、時間的な都合上、2021年12月期の結果まではお知らせすることができませんでした。それについては、この秋に実施するセミナーでフォローしていただくとして。

今日は、その中でも最新情報を共有します。2022年10月6日に、「気候変動の会計と監査」の流れを加速させるような文書がリリースされました。そう、有価証券報告書の前半の記述情報ではなく、後半の“財務諸表”に気候変動の影響を反映させる流れが。

カーボントラッカーによる分析結果

その文書とは、「Still flying blind-The absence of climate risk in financial reporting」。ボクなりに仮訳すると、「依然として視界が晴れない投資判断-財務報告における気候変動リスクの不在」といったところでしょうか。

これを公表したのは、気候変動リスクに関する新しい考え方を生み出すために設立された非営利団体であるカーボントラッカーです。これは、2021年9月16日に公表された「Flying blind:The glaring absence of climate risks in financial reporting」(仮訳:視界が晴れない投資判断-財務報告における気候変動リスクの顕著な欠如)の続編です。

前回のレポートでは、世界最大の炭素排出企業の7割以上が2020年の財務諸表で気候変動リスクの影響を開示せず、また、その監査人の8割が財務諸表監査に気候変動リスクを評価した形跡がないとの分析結果が示されました。

2021年の財務諸表への反映状況

今回のレポートでは、「Climate Action100+」の対象企業のうち炭素排出量の多い134社が選ばれました。この「Climate Action100+」は、世界の産業界の温室効果ガス(GHG)排出量の最大80%を占める企業を対象としています。そのため、気候問題が重要ではないとはいえないような企業が選ばれています。

その結果、これらの企業の98%は、財務諸表において重要な気候変動事項の財務的影響への検討がどのように含まれているかを示すために十分な情報を提供しなかった、といいます。

多くの企業が気候変動リスクは重要であると認識し、また、排出量目標を設定し達成するための手段を講じていることを示しています。しかしながら、財務諸表上の関連性を明らかにすることはできていなかったとも報告します。

さらに興味深い指摘が続きます。これらの相違は、グリーンウォッシングの証拠、つまりは、上辺だけの認識と対応策ではないか、と分析しているのです。財務諸表が正なら記述情報が虚偽、または、記述情報が正なら財務諸表が虚偽、という構造です。

2021年の監査への反映状況

また、監査人についても、気候変動に関連する重要な事項の影響を考慮したという証拠はほとんどなかったとの分析結果が示されています。レポートの分析はここで終わりません。同じグローバルファームの監査報告書でも、異なる企業や国に関連して発行されたものには著しい相違があることも確認されたようです。そのため、財務諸表監査における気候変動問題への対応について、ネットワークの方針と実務が欠如していることを示唆している、とまで指摘されています。

ここでも興味深い指摘が紹介されています。なんでも、46社の米国企業に関する監査人の誰もが、監査において気候変動問題の影響を包括的に考慮したという証拠を提供していなかった、とのこと。

ちなみに、前回のレポートでは、同じ企業で、欧州市場向けの監査報告書では気候変動に言及したKAM(Key Audit Matters)を記載していながらも、米国市場向けのCAM(Critical Audit Matters)ではそれが削除されていたことが問題視されていました。このような点にも、監査人の対応の差が生じています。

気になる機関投資家の次のアクション

以前から、機関投資家は企業や監査人に対して、気候変動の会計と監査を要求していました。しかし、2021年の財務諸表でも期待に沿わない結果になったことをカーボントラッカーのレポートは伝えています。

これまでの一連のアクションを踏まえると、これから年末にかけて、機関投資家からさらなる声明が出されることは必至。2022年12月期の年次総会では、監査人、監査委員会の再任決議に反対票を投じる動きがますます増えそうです。

こうした流れは、日本企業としてもキャッチしておくことが重要なのは説明するまでもありません。ただ、ボク以外に、気候変動の会計と監査について真正面から解説したものを見かけないのも事実。近々では、こちらのセミナーで全体像をご紹介しますので、ぜひ、ご参加ください。もちろん、このお誘いを断るのは自由です

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