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人生に影響を与えたコラム「酒とビデオの日々」

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

文体。それは想像以上に読み手に影響を与えるもの。これについてボクが好きな話は、文筆家の千田琢哉サンが『心を動かす 無敵の文章術』(マガジンハウス)で紹介されていた、ご自身の業務日報の経験談。

なんでも、退屈な日報の作成を楽しもうと、好きな作家の文体で書いていたとのこと。例えば、芥川龍之介になり切ったときには上司から「何かイラッとくるんだよ」と言われ、また、石川啄木を真似て三行日記にしたときには「何か切ないな」としんみりされたそうです。

 

そんな文体について、ボクがお手本にしているのは、ホイチョイ・プロダクションズ代表である馬場康夫サン。馬場サンのコラムとして意識して読み始めたのは、当時のテレビ情報誌『TeLePAL テレパル』(少学館)に連載されていた「酒とビデオの日々」。途中、再生機がビデオからDVDへと移行していく中で、タイトルが「酒とDVDの日々」に変わりましたね。

このコラムでは、映画や当時の流行りモノに関するネタを解説しながら、語りかけるような口調で気軽に読めるテイストに仕上げられていました。そんな文体に接しているうちに、自分でも同じようなコラムを書きたい気持ちが強くなっていきます。それが世に発表されたのは、2008年7月に発売となった、ボクの2冊目の単行本『道具としての会計入門 これならわかる会計監査』(日本実業出版社)でのこと。

 

原稿を出版社に提出したところ、編集者から、各章の終わりにコラムを入れたいと要望されました。そこで、「酒とDVDの日々」を意識した原稿を、急遽、10本、書き上げます。「会計士の7つ道具?」や「電卓の曲芸と悲劇」といったものもあれば、「ハンバーガーとサステナビリティ」のようにESGに関連したものもあります。

いざ、そんな原稿を提出したものの、内心は穏やかではありませんでしたよ。本文とは全く異なる、軽い文体のコラムでしたからね。却下されたらどうしようと、ビクビクしていたものです。そんな話を編集者にしたところ、「本文もあれくらい軽くても良かったですよ」の一言。あらま。

 

こうして、会計監査をテーマでも、あの文体が受入れられた体験をしました。それに気をよくしたボクは、その後に立ち上げた自身のブログでも用いています。当時は、会計に関する記事で、気軽に楽しめながらも的確な内容で解説しているものが、ほぼなかった状態でしたからね。

最初の頃は、細かな言い回しも含めて、随分と真似ていましたよ。「~だそうで」「~のようで」と書くときには、それぞれ「~だそーで」「~のよーで」と表記するといった感じで。今では、多少は自分なりの文体になってきた感がありますが、人名を紹介するときにカタカナで「サン」と書くスタイルは踏襲したまま。

 

最近は、株式会社プロネクサスさんの会員サイトで、会計に関するコラムを執筆する機会があります。実は、最初にご依頼をいただいた際に、「コラムのため、『読み物』のようなテイストで」とお話しがありました。そのため、コンテンツと読みやすさを両立させたホイチョイ的な文体で楽しんでもらえるように努めています。

といっても、ブログではないため、くだけ過ぎないように注意をする必要があります。その意味では、「酒とDVDの日々」の文体では、読者層から真っ当な解説だとは理解されない可能性も考えられます。そこで、同じくホイチョイの馬場サンが女性誌FRaUで連載していた「東京コンシェルジュ」の文体を参考にしました。「東京コンシェルジュ」では読者層やコラム内のキャラクターであるコンシェルジュに合わせて、少し上品な語り口となっているからです。

来月の2022年12月には、もう1本、新しいコラムが掲載される予定です。前回のコラム「日本企業が知らない『気候変動の会計』」では、コンテンツ寄りで少し硬めの文体となってしまいました。その反省から、次のコラムでは読みやすさとのバランスをとっていますので、お楽しみに。

 

そうそう、1本といえば、馬場康夫サンの最新刊『この1本! 超人気映画シリーズ、ひとつだけ見るならコレ』(小学館)が、2022年8月に発売されましたね。この「あとがき」にはシビレましたよ、ほんと。冒頭の問いかけを、締めの文章でこんな素敵に回収するなんて。その詳細は、ぜひ、本書でご確認ください。

 

こうした文章の締めが、また、ボクの執筆に影響を及ぼすんだろうな。読者から、「何か楽しいんだよな」と喜ばれるために。

 

P.S.

「酒とビデオの日々」と「酒とDVDの日々」をコンプリートしたクロニクル版を、今でも切望しています。何も編集することなく、そのままの紙面を一冊にするイメージで。小学館サン、お願いします!

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