「神回」。連続ドラマで、話の出来が良い回のことを「神がかった回」という意味で「神回(かみかい)」と呼ぶことがありますね。ボクが今日の2023年5月15日に実施した大学での簿記論の授業は、先週から「神回」宣言していましたよ。
この言葉、脚本家の北川悦吏子サンによって認知度が高まりましたね。2018年度上半期放送のNHK「連続テレビ小説」『半分、青い。』が放送されていた当時、Twitterで北川悦吏子サン御本人が「明日は神回」とツイートしたことが話題になりました。
そう言えるほどに力作であると自負している証拠。実際、面白かったですし。そもそも、作り手が面白いと思っていなければ、観客もその作品を面白いと感じることはないでしょう。ボクも、今日の授業の内容にはいつも以上に自信があったため、神回宣言を行っていました。
で、今日、3分法をテーマにした授業を行ってきました。神回といえるほどに自信があったのは、次の3つの理由から。
3分法の発展過程
1つ目の理由は、3分法と呼ばれる理由を発展の過程から紐解いたから。今の日商簿記検定の3級では、分記法や総記法が対象範囲ではなくなったため、簿記のテキストでは教えなくなっています。ボクも昨年の授業では、それに従って「販売したときは売上勘定、買い付けたときは仕入勘定」という前提で説明していました。
しかし、それでは、どうにも3分法が、何を3つに分けて記録していくものなのかを説明しきれない。その前提まで解説したい。そこで、今年の授業では、そのエッセンスを整理して解説するようにしました。丁寧に順を追っていけば、何も難しいところはない。
ちなみに、工夫したのは、3分法の説明もいきなり仕入勘定での集計には入らないこと。まず売上原価勘定で集計する流れを示した次に、これを簡略するために仕入勘定を使っていることを解説しました。大陸式よりも英米式のほうが帳簿の締切りを簡略化しているように、ここでも簡略化が行われています。それが実務だと説明しました。
先入先出法の理論値
神回である2つ目の理由は、先入先出法の問題の解き方。回答の確認方法ともいえます。商品の払出単価の計算方法として、まず、テキストに従って先入先出法と移動平均法を説明します。次に、ワークブックで関連する問題を解きます。で、回答を説明します。
ここで、受講している学生に問います。簿記2級や3級、税理士や会計士の勉強を進めているなら、特にこれを行っているかと。それは、理論値との比較。先入先出法のため、期末在庫は直近の購入単価で構成されやすい。そこで、数量と単価のT勘定を示すことで、期末在庫は直近の単価になることを確かめます。ならば、期末在庫の単価はこの単価でしょ、と。
こうして理論値を出したうえで帳簿計上額と比較するのは、会計士による監査の発想が強いかもしれません。とはいえ、問題を解いて時間を余らせるのではなく、その時間を使って理論値と合わせるクセをつけるように指導しました。3級の段階からそんな姿勢が身につくと、実務で大活躍できるようになれますね。
ちなみに、先入先出法と移動平均法が必要な理由を説明したのも、2つ目の神回の理由に含めています。個別物価が変動している場合に、どちらかによってBSやPLの金額が時価に近似する、しないが変わるため。2022年ロシア・ウクライナの件では一部の国でインフレーション会計が話題になったように、会計として意味の大きな論点ですからね。
4曲もあった簿記ソング
神回である3つ目の理由は、簿記ソングのラインナップが増えたこと。去年のこの時期は、「仕入/繰越商品、繰越商品/仕入」について、優里サンの『ドライフラワー』で覚える方法を披露しました。その様子は、ブログ記事「簿記のヤマ場「仕入、繰越商品」を一発で覚える方法」でも説明しましたね。
その後、受験している時期とバッティングしている歌では知らない可能性があることに気づきます。そこで、いくつかの歌を改めて調べてみます。すると、あるじゃありませんか、簿記ソングが。そこで、今年は次の4曲を選びました。
- 優里『ドライフラワー』(2020年10月)
- あいみょん『マリーゴールド』(2018年8月)
- Saucy Dog『シンデレラボーイ』(2021年8月)
- King & Prince『シンデレラガール』(2018年5月)
ここまで歌えば、いやでも耳に残るでしょう。頑張りました。やりきりました。今までで一番笑いがあったかもしれません。来年の授業に向けて、簿記ソングの発掘に勤しみます。
こんな感じで力点が複数あったため、自ら神回認定した次第。繰越商品の論点がらくらくとクリアできていれば嬉しいですね。さて、次回も神回なのですが、その内容は秘密。