2023年7月6日に、金融安定理事会は、TCFDの作業が完了したことを発表しました。また、IFRSサステナビリティ開示基準第2号「気候関連開示」、いわゆるS2基準が「TCFD作業の集大成」とみることができるとも表明しています。TCFDからS2基準へという流れは、金融安定理事会が描くロードマップどおりに動いています。
すると気になるのは、TCFDとS2基準との違いでしょう。S2基準が公開草案として提示された際に、公開草案ベースでTCFD提言と比較した資料が用意されていました。SSBJが翻訳していたため、ご覧になっているかもしれません。
その後、S2基準が最終化した時点では、この比較資料が提示されていませんでした。公開草案からの違いも少なくはないことから、おそらく比較や資料作成の手間が大変なんだろうと推測していました。そのため、自身で作成することを覚悟していました。
そんな中、昨夜の2023年7月24日、IFRS財団がTwitterで、確定したS2基準とTCFD提言との比較資料を公表したとツイートしたのです。基準設定主体からの比較分析のため、気候変動のサステナビリティ開示に取り組む関係者にとって有益な資料となるに違いありません。この資料を入手するために、IFRS財団のウェブサイトで、次のニュースページを訪れました。
- IFRS Foundation publishes comparison of IFRS S2 with the TCFD Recommendations(仮訳:IFRS財団、IFRS S2とTCFD提言の比較を公表)
ニュースページでは、ISSB基準を適用する企業はTCFD提言を満たすため、ISSB基準に加えてTCFDの提言を適用する必要はない旨が記載されています。また、TCFDの作業は完了したものの、企業が利用することを選択すればTCFD提言は引き続き利用可能であるため、その利用はISSB基準に移行する際に良い入口となるとも説明されています。
ここで、気候変動のサステナビリティ開示を進めていくにあたって、次の疑問が浮かぶかもしれません。まずは、このニュースのとおり、TCFD提言に沿った対応を進めていくのか良いのか。それとも、TCFD提言を包含しているISSBのS2基準を焦点にしたほうが良いのか。
そこで今回の記事では、S2基準とTCFD提言の比較について一部を紹介しながら、この疑問に答えていきましょう。SSBJから正式な翻訳が公表されるのは少し先になるでしょうから、いち早くS2基準の概要をつかむ機会にもできます。