2024年10月3日に開催されたSSBJ(サステナビリティ基準委員会)の第40回会合で、私が提出したコメントが再び基準策定に反映されました。これは、ブログ記事「基準の未来を左右する戦略的コメント:SSBJに投じたコメントの真意」で紹介した「金額」という用語を「数値」に修正する意見が採用されたことに続く、2回目の採用です。
今回の会合では、温室効果ガス排出に関する「表示単位及び端数処理」の議論が行われる中、公開草案にあった端数処理に関する記述が削除されることが決定されました。この結果は、ブログ記事「日本初のサステナビリティ基準、あなたの意見が歴史を作る」で紹介した私の意見が、基準の策定に影響を与えたことを示しています。
■コメントの詳細と採用結果
私がSSBJに提出したコメントのうち、温室効果ガス排出の端数処理に関するものは、次の2つです。
- コメントA:温室効果ガス排出量に関する「少なくとも桁数が大きい方から3桁を表示しなければならない」(気候基準案BC105項)という要求に反対。
- コメントB:同じくBC105項が有効桁数を意図していない場合、そのことを明記すべきである。
会合では、コメントAに基づいて、温室効果ガス排出の端数処理に関する規定を基準本文から削除することが決定されました。また、コメントBについても、審議資料「審議事項 A1-2」において、温室効果ガス排出量に関する表示が有効桁数に関するものではないことが明確にされました。このため、2つのコメントが結果的に反映されたと言えます。
■審議の背景
温室効果ガス排出量の端数処理に関する記述が削除される理由は、私がコメントAで述べた理由と完全には一致していません。私が反対した理由には、以下の2点があります。
- ISSB基準との不整合:ISSB基準には同様の規定がないため、SSBJ基準が過度に詳細であることが懸念されました。
- データ精度に関する誤解のリスク:「少なくとも3桁」の表示要求は、データの精度に対する誤解を招きかねないため、測定の複雑さを増すだけではなく、誤解による判断ミスのリスクが懸念されました。
しかし、SSBJはこれらの理由ではなく、基準の簡素化とISSB基準との差異解消を理由として端数処理の削除を決定しました。結果として、私のコメントのうち1つが採用された形です。
■今後の展望
削除された端数処理に関する記述は、補足文書や解説記事で提供される予定です。これにより、基準は明確に保たれ、また、実務者に対しても適切なガイダンスが提供されることが期待されます。
私のコメントが採用されたことで、SSBJ基準の策定に寄与できたことは誇りです。今後も、基準の公正さと実践的な運用に向けて、意見を発信し続けます。この歴史的な動きに注目し、今後の議論を見守っていただければ幸いです。