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米国サステナビリティの二幕劇:政治はブレーキ、経済はアクセル全開

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アメリカのサステナビリティ政策は今、奇妙なねじれ現象の中にあります。一方では、政権交代によって保守的なエネルギー政策へと回帰し、連邦レベルでは明らかに逆風が吹いているのです。

2024年3月にSEC(米証券取引委員会)が採択した気候関連リスク開示の最終規則も、わずか数週間後には擁護を取り下げられるという異例の展開を見せました。また、現政権の下では、クリーンエネルギーへの補助金が相次いで縮小・撤回されようとしているため、石油やガスへの回帰姿勢があらわになっています。この現状だけを見ると、「アメリカは気候変動対策に背を向けた」と早合点してしまいそうですね。

しかし、それはちょっと表層的すぎる見方かもしれませんよ。実は、その足元でアメリカのビジネス界は、別の物語を描きはじめています。特に気候テクノロジーを巡るスタートアップとベンチャーキャピタルの動きは、まさに熱気を帯びてきているのです。政治の足踏みとは裏腹に、経済界では技術革新と資本投入が目覚ましい勢いで進行しています。言ってみれば、「政治はブレーキを踏んでいても、経済はアクセル全開」といった様相を呈しているのですよ。

この現象を的確にとらえているのが、アメリカの『Fast Company』誌が毎年発表する「The World’s 50 Most Innovative Companies」ランキングです。いいですか、あのアメリカで発行されている経済誌の話ですよ。

Fast Company [US] Spring No. 52 2025

 

 

このランキングは全体のトップ50社に加え、セクター別の最も革新的な企業も選出しています。注目すべきは、2024年から新設された「サステナビリティ部門」の動向です。

 

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