FSFD

米国サステナビリティの二幕劇:政治はブレーキ、経済はアクセル全開

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。)  

アメリカのサステナビリティ政策は今、奇妙なねじれ現象の中にあります。一方では、政権交代によって保守的なエネルギー政策へと回帰し、連邦レベルでは明らかに逆風が吹いているのです。

2024年3月にSEC(米証券取引委員会)が採択した気候関連リスク開示の最終規則も、わずか数週間後には擁護を取り下げられるという異例の展開を見せました。また、現政権の下では、クリーンエネルギーへの補助金が相次いで縮小・撤回されようとしているため、石油やガスへの回帰姿勢があらわになっています。この現状だけを見ると、「アメリカは気候変動対策に背を向けた」と早合点してしまいそうですね。

しかし、それはちょっと表層的すぎる見方かもしれませんよ。実は、その足元でアメリカのビジネス界は、別の物語を描きはじめています。特に気候テクノロジーを巡るスタートアップとベンチャーキャピタルの動きは、まさに熱気を帯びてきているのです。政治の足踏みとは裏腹に、経済界では技術革新と資本投入が目覚ましい勢いで進行しています。言ってみれば、「政治はブレーキを踏んでいても、経済はアクセル全開」といった様相を呈しているのですよ。

この現象を的確にとらえているのが、アメリカの『Fast Company』誌が毎年発表する「The World’s 50 Most Innovative Companies」ランキングです。いいですか、あのアメリカで発行されている経済誌の話ですよ。

Fast Company [US] Spring No. 52 2025

 

 

このランキングは全体のトップ50社に加え、セクター別の最も革新的な企業も選出しています。注目すべきは、2024年から新設された「サステナビリティ部門」の動向です。

 

『リースの数だけ駆け抜けて』第13話「専門家という壁」前のページ

『リースの数だけ駆け抜けて』第14話「最後の準備」次のページ

関連記事

  1. FSFD

    英国サステナビリティ保証市場に潜む「未成熟」の真相とは

    日本におけるサステナビリティ保証制度の議論が具体化しています。202…

  2. FSFD

    リスク軽減活動がサステナビリティ関連リスクの識別に与える影響

    サステナビリティ開示において、最も難しい課題の一つは将来の不確実性を…

  3. FSFD

    無料で手に入る「サステナビリティ関連情報の作成ワークシート」

    サステナビリティ関連情報を作成するためのワークシートが入手できること…

  4. FSFD

    SSBJ基準が直面する課題、温暖化係数の更新とその影響とは

    SSBJ(サステナビリティ基準委員会)では、国内のサステナビリティ開…

  5. FSFD

    全産業に広がる改革の波:SASBスタンダード改正の行方を探る

    サステナビリティ関連の基準やフレームワークは、刻々と変化しています。…

  6. FSFD

    127ページに凝縮されたSSBJ基準(公開草案)の解説

    次のどれかに該当するなら、今回のセミナーがお役に立ちます。…

  1. FSFD

    基準の未来を左右する戦略的コメント:SSBJに投じたコメントの真意
  2. Accounting

    『東京改造計画』から学ぶイノベーションの起こし方
  3. Accounting

    プラネタリウムで「耐用年数」の用語を聞いたなら
  4. Accounting

    リースの罠
  5. Accounting

    KAM早期適用のリサーチからの気づき
PAGE TOP