FSFD

ESRS開示における「接続性」の要請――なぜ優秀な企業ほど、マテリアリティ開示で躓くのか

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。)  

2025年10月14日、欧州証券市場監督局(ESMA)が公表した「2025年企業報告に関する欧州共通執行優先事項」は、サステナビリティ報告における新たな局面を示しました。その中で特に注目されるのが、サステナビリティ報告における「マテリアリティの考慮」と、それを支える「開示構造の接続性」という、一見地味だが極めて本質的な実務課題です。

  • “European common enforcement priorities for 2025 corporate reporting”

https://www.esma.europa.eu/sites/default/files/2025-10/ESMA32-2064178921-9254_Public_Statement_-_2025_European_Common_Enforcement_Priorities.pdf

興味深いのは、ESMAが求めているのが単なる情報の羅列ではない点です。ダブル・マテリアリティの結果を開示の構造に組み込むことで、利用者が容易に理解・探索できる形式を実現することです。問われているのは「何を報告するか」ではなく、「どのように報告情報を接続し、利用可能にするか」という設計思想そのものなのです。

本稿では、同日付で公表された次の実態調査報告書を手がかりに、ESMAが指摘する実務上の課題と改善の方向性を明らかにしていきます。

  • “Materiality matters (!): Results of a fact-finding exercise on 2024 corporate reporting practices under ESRS Set 1”(仮邦題:マテリアリティの問題 (!)-ESRS第1セットに基づく2024年企業報告実務に関する実態調査の結果)

https://www.esma.europa.eu/sites/default/files/2025-10/ESMA32-846262651-5288_Fact_finding_on_materiality_disclosures_in_sustainability_statements.pdf

ESMAは23加盟国から91社のサンプルを対象に、2024年度(初年度)のESRS適用状況を調査しました。対象企業の90%は従業員1,000名以上という、サステナビリティ報告に十分なリソースを投入できる欧州を代表する企業群です。

ところが、この調査は企業が直面する三つの構造的課題を容赦なく浮き彫りにしました。皮肉なことに、これらの課題は「優秀な企業ほど陥りやすい罠」でもあるのです。

 

【制作レポート】内部監査を“チェック”から“インテリジェンス”へ導く特典が、ついに形になってきました前のページ

スコープ3は15カテゴリーで本当に語り尽くせるのか次のページ

関連記事

  1. FSFD

    リスク軽減活動がサステナビリティ関連リスクの識別に与える影響

    サステナビリティ開示において、最も難しい課題の一つは将来の不確実性を…

  2. FSFD

    比較情報の修正が突きつける、サステナビリティ開示の新たな難題

    サステナビリティ報告の重要性が高まる中、国際的な基準の導入が進んでい…

  3. FSFD

    2023年公表の「気候会計・監査ハイブリッド評価」

    企業による気候関連の開示状況は、評価されています。しかも、その企業の…

  4. FSFD

    サイバーセキュリティに関するサステナビリティ開示の留意事項

    無知とは怖いものです。その反対に、いったん知ってしまえば、状況がイメ…

  5. FSFD

    担当者のためのSSBJ基準(公開草案)の完全理解セミナー

    サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の公開草案には、サステナビリテ…

  6. FSFD

    IFRS財団ウェビナーに学ぶ、GHG排出量の測定実務

    気候関連のサステナビリティ開示において、温室効果ガス(GHG)排出量…

  1. Accounting

    これが、「見積開示キャンバス」だ
  2. FSFD

    「サステナビリティ関連のリスク及び機会」の開示情報の選び方
  3. Accounting

    財務報告の流儀 Vol.013 住友金属鉱山、あずさ
  4. Accounting

    財務報告の流儀 Vol.040 日本取引所グループ、トーマツ
  5. Accounting

    ブレイクダンサーがふいっと見る有価証券報告書
PAGE TOP