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講師に必要な時間管理術

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

人前で話すときのことを想像してみてください。

それは、セミナーや研修かもしれませんし、講演かもしれません。あるいは、組織のリーダーとしてメンバーに理念を伝える場かもしれません。そのように、何かを説明する、伝えるといった場に立っていることを想像してみるのです。

そういう場で、あなたの持ち時間が60分だったとします。最初は緊張しながらも、段々と慣れてきて流暢に話すことができる感覚がつかめたため、話が盛り上がります。

終わりまであと10分になった頃、あなたは、用意してきたネタがまだまだ残っていることに気づきます。当初の予定で進めるなら、30分は必要な計算です。

このとき、あなたは一体どんな選択をするでしょうか?

ここで3つの選択が考えられます。

1つ目の選択は、当初の予定どおり、30分間話すこと。つまり、20分の延長を選択するものです。
あなたには伝えたいことが山のようにあります。これをちゃんと伝えたい、ちゃんと伝えることがこの場の趣旨だと考えて、20分延長することを選択するのです。

これ、最悪です。あなたは、自分のことしか考えていないからです。参加者は、聞いていた時間を踏まえてスケジュールを立てています。その後に、何かの予定が入れていたり、交通機関の手配をしていたりと。こうした参加者の都合を、まったく考慮していないのです。

そもそも、延長になった原因は、途中でマイクやスライドの故障で中断されたといった事象がない限り、事前の準備不足にあります。伝える内容を詰め込みすぎているか、伝える内容を説明する時間が長すぎるかなど、あらかじめ配分を考えていれば延長は生じません。また、仮に延長した場合したとしても、ここで調整しようなどと別のシナリオを用意しておくこともできます。

知り合いから聞いた話では、ある講演で60分のところ20分もオーバーしたそうです。持ち時間の3分の1も延長したのです。しかも、その講師が一番伝えたかったメッセージが、”Time is Money”。まったく笑えません。

2つ目の選択は、残り10分の中で伝えられるネタだけ伝えるもの。持ち時間の中で収めるという意味では、最低限のマナーはクリアしています。

しかし、参加者からすると、配布された資料の一部が説明されないまま終わるのは不安です。参考資料として用意していたものならともかく、本編の資料として配布されているときには、手を抜かれた感じを受けるでしょう。なので、この選択肢も良くはありません。

すると残るのは、3つ目の選択肢。これは、残り10分の間に伝えるべきネタを省略することなく、すべて伝えるもの。

ここで紹介したい本が、メンタルトレーナーの久瑠あさ美サンが書かれた『72時間をあなたの手帳で管理すれば、仕事は劇的にうまくいく』。ボクが手帳術を調べたくて手にしたものです。この中で、講演で残り10分というときの著者の対応が説明されています。

この著者によると、残り時間が少なく、しかも伝えるネタがまだあるにもかかわらず、本来のペース配分で行けばまだ時間が必要という場合に、「逆にゆったり伝えていきます」とのこと。「伝えたい情報をぎゅっと濃密なカプセルに詰め込む」ことで、「表層意識ではなく、無意識の領域に働きかけることができるので、聴講者の行動を変えるためには非常に即効性の高いアプローチ」だといいます。メンタルトレーナーとして、心理的な観点から説明しています。

確かに、時間がない中で残りのネタをすべて伝えるには、そのネタを最も端的な言葉で表現しようとするハズ。具体的なことよりも抽象的に表現することで、そのネタのエッセンスだけが取り上げられるため、伝えたいエネルギーが凝縮されます。だから、意識をすり抜けて、いわゆる潜在意識に呼びかけることができるというワケ。

この話をもう聞いてしまったからには、あなたが今後、同じような状況で取るべき選択肢は、たった1つ。時間を延長する選択肢はありえません。また、伝えるネタを減らす選択肢もありえない。あなたが取るべき選択肢は、ネタを凝縮して伝えることしかないのです。

もっとも、こんな状況に陥らないためには、事前の準備が不可欠。ボクはいつも、スライドひとつひとつに要する時間を積み上げていく方法を使っています。その積み上げた結果をみて余分なネタを省くこともできます。つまり、メッセージが伝わりやすくなるのです。

以前に弁護士さんとダブル講師でセミナーをしたときに、その積み上げシートを見せると「こんなに細かいことをしているのですか。会計士さんらしいですね」と言われたことがあります。

また、ある大学で講師をしたときにも、このシートを見た先生たちから「あのシートって、時間配分しているものなんですか」と興味深く聞かれたこともあります。

さらに、後輩が研修講師に慣れていない頃にこのシートを渡したところ、さっそく使って時間どおりに内容を伝えきることができるようになりました。時間配分ができているため、参加者からは講師が落ち着いて説明しているように見えます。よって、安心感を与えられる効果も得られます。

ボクが専門家や士業向けに講師セミナーを開催するなら、このシートはツールとして間違いなく盛り込みます。

さて、想像してみてください。人前で話すときに、事前準備をして、持ち時間の中で伝えたいことをすべて伝えられるようになっている自分を!

P.S.
久瑠あさ美サンは、多作家のひとり。巻頭のカラーページに掲載された実際の週間スケジュールをみて、多作家であることに納得。
・久瑠あさ美『72時間をあなたの手帳で管理すれば、仕事は劇的にうまくいく』

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