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ゲームは5つの方法で変える

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。)  

 1978年にゲーム「スペースインベーダー」が登場して、今年が40周年。名古屋撃ちをしていたあの当時から40年も経っているなんて・・・、きっと時空が歪んでいるハズ。

 今回のお話は、ゲーム理論。経営学でいう「ゲーム理論」のこと。インベーダーゲームという狭い話ではなく、広く戦略がかかわる情勢のことを「ゲーム」といい、また、その戦略に伴う技術と理論を総称して「ゲーム理論」といいます。

 このゲーム理論は、数学者ジョン・フォン・ノイマンと経済学者オスカー・モルゲンシュテルンの共著書『ゲームの理論と経済行動』(筑摩書房)によるもの。しかし、経営学の理論にとどまっていた訳ではありません。実際にビジネスの場で適用されているのです。 

 そこでは、展開されているゲームを認識、つまりは情勢を読んだうえで、自社に有利になるゲームチェンジを考えていきます。その結果、合弁事業や合併、新規事業展開などを戦略的に選択肢とするようになったといいます。

 そんなゲーム理論が企業の意思決定にあたってどう活用されているかを知りたくて手にしたのが、『世界の一流企業は「ゲーム理論」で決めている』(ダイヤモンド社)という本です。著者は、MBA教育プログラムで世界的に評価の高いデューク大学のデビッド・マクアダムス教授。この本は、一言でいえば、ゲームチェンジャーになることを説いたもの。 

 この本では、「囚人のジレンマ」と呼ばれるゲーム、つまりは戦略がかかわる情勢を引き合いに出しながら、ゲームチェンジの仕方を教えているのが特徴的。ここで囚人のジレンマとは、次のような情勢を指します。

 二人の犯罪者がある犯罪で捕まった。彼らはより刑が重い犯罪もしている可能性がある。警察が司法取引を持ちかける。

「二人とも黙秘したら懲役はそれぞれ5年。一方、二人とも自白したら懲役はそれぞれ10年。ただし、お前が自白して向こうが黙秘したなら、警察に協力したということで無罪放免だ。その反対に、向こうが自白してお前が黙秘したなら、懲役20年だ。」

 別々の独房に隔離されている中で、自白を迫られる。相手の出方はわからない。チャンスは一度きり。うまく乗り切ることができない状態。これを囚人のジレンマといいます。

 しかし、本書では、囚人のジレンマのような完璧に手も足も出ない状態は現実には例外なため、ゲームチェンジはできるといいます。囚人のジレンマから回避するルートとして、有利な規制にする、合併などで共謀する、有効な報復で牽制する、信頼を構築する、関係性を活かす、の5つを挙げています。

 しかも、自社の置かれた情勢を踏まえて、いずれを選択すべきかのルートが明確に示されているので、すぐに実践で活用できます。まさに、ゲームの攻略本。

 

P.S.
 会計監査のKAM(監査上の主要な検討事項)の早期適用は、ゲームチェンジできない囚人のジレンマの状態。どのような対応が合理的なのかについて、セミナー「上場企業へのKAMインパクト」で解説する予定。
https://www.gyosei-grp.or.jp/images/pdf/seminar_tokyo_20181214.pdf(終了しました)

 

P.P.S.

日本におけるKAM早期適用事例の分析について、当ブログでは「財務報告の流儀」というシリーズ投稿で解説しています。ただ、ワンコインの有料コンテンツとして提供しているため、「お試し版」をこちらで用意しています。

 

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