一体、何がしたいんだー。うおーーーっ!
そう叫びたくなる会議に参加したことがあります。労力的にも財務的にもロスしてるだろ、と。
手段が目的化する、なんて言葉を見聞きすることがありますよね。本来なら、ある目的を達成するために、手段を考えるところ、目的を忘れて手段の話に終始してしまう状態。遠いどこかの話かと思いきや、自分の身に降り掛かってきたのです。もう、最悪。
労力的にも財務的にもロスさせた人物を、仮に「ロス君」と呼びましょう。そのロス君が、会議の場で、頑張って作ってきた資料を披露しました。その成果をうまく活用できるなら、有意義なものに仕上がりそうな出来。
ただ、プロトタイプの段階であったため、自動で作成するシステムなんてない状態。そこでロス君は、何人かの力を借りて、手作業で資料を作成しました。それが随分と苦労したので、今後はシステムを導入すべきと主張し出します。
そんな議論を延々とした最後に、こう言ったのです。「この資料の活用の仕方を募集するので、知らせて欲しい」。
おいおいおい、使い方も定まっていないのに、資料を作っていたのか。驚きを通り越して、斬新。絵に描いたような「手段の目的化」に遭遇しました。
そもそもは、目的をはっきりさせてからスタートすべき。どう使われるかの組織のコンセンサスがない中で、プロトタイプ作りに相当の労力をかけるなんて、ダメなケースの典型例。
ひとりだけの作業なら自業自得ですが、その作成に関わった人もいます。ロス君以外の人たちの労力が相当程度、費やされているのです。きっと、プライベートの一部も犠牲にしたはず。目的もないまま、残業代というコストをかけたのって話。あり得ない、あり得ない。
マーケティングを学んだり、イノベーションを創り出そうとしていたりするボクらの感覚では、まず達成したい目的があって、その次に手段は何を使うか、使えるかという順番。それをひっくり返すとは、自分のしたいことを相手に押し付けているだけ。
もっと言えば、ロス君に限らず、その上司も目的を定めたうえでゴーサインを出すべきでした。そういう順番をわかっていないと、巻き込まれた人がいい迷惑です。
それもこれも、ロス君やその上司が、マーケティングやイノベーションの感覚を身に着けていないから。たとえ、そういった仕事に直接関わっていなくても、その感覚は物事を達成するためには必要。これらの作法があれば、顧客が起点となるからです。ビジネスモデル・キャンバスでいえば、カスタマーセグメントからのスタート。
といっても、そんな学びをしていない人にいきなり身に付けろと言ってもムリ。第一、時間がかかりすぎます。45歳を過ぎると学ぶことをしなくなる人が増えると聞いたことがあります。彼らはその年齢も超えていれば、学んでいる様子も見られない。なので、そんな感覚を身につけさせるのは、なおさら期待できない。
じゃあ、どうする。
そこで、提案したい合い言葉があります。それで目的を思い出させることで、手段の目的化を防ぐことが期待できます。たった一言でいいのです。これを、ロス君やその上司のような人に発することで、一気に達成したい目的に意識を引き戻せます。
もちろん、その合い言葉を自分自身に発しても効果的。視野が狭くなると、知らずにロス君のようになりがち。だから、それによって報われない努力をしなくても済むようになるでしょう。
そんな目的を確認できる合い言葉は、これ。
「で、何をしたい?」
P.S
ワークショップ型のセミナーでは、参加者に目的を設定してもらうことがあります。ただ、慣れていないと、目的設定が上手くできない人もいます。
先日、書店で、この本に書かれていた方法論が目的設定に活用できそうとピンと来ました。そんなツールづくりとして参考にしたい本です。
・ひすいこたろう、大嶋啓介『前祝いの法則』(フォレスト出版)