世の中、売れているものと、売れていないものとがあります。音楽だったり、小説だったり、イベントごとだったりと。
昨年の2018年は、男性アイドルグループのKing & Princeのデビュー曲『シンデレラガール』が売れに売れました。その年のNHK紅白歌合戦にも出場しました。
こうした売れているものを分析すると、ビジネスに役立つ気づきを得られることがあります。もちろん、売れているものに必ずしも原因はない場合もあります。実際、たまたま売れただけのケースや再現性のないケースもあるでしょう。
しかし、それは分析してみないと分からないこと。ボクは、ファシリテーターとして、著者として、セールスライターとして、言葉の使い方や表現の仕方には関心が強い。そこで、King & Princeの歌詞を注意深く読んでみました。
すると、歌詞の凄さに驚き。こんなことを言われたら、女性はキュンキュンせざるを得ない。特に独身男性は、この歌詞から学ぶことがいっぱい。既婚男性も奥様に使うと喜ばれるハズ。作詞をした河田総一朗サンをこれから注目していきたいと思いましたよ。
その歌の中には、こんな歌詞があります。
いつになっても いつになっても
となりでその笑顔見せて
このポイント、わかりますか。もし「笑顔見せて」の歌詞だけに着目したのなら、まだまだ女心を理解できていないかもしれません。
確かに、ここもポイントのひとつ。男子目線では、その笑顔が好きなこと、そして、そんなキミが好きなことを間接的に伝えるときに使うもの。
一方で、女子目線では、よーっっっぽど好きな人から言われない限り、「笑顔見せて」だけ言われても「なんで?」「その理由は?」と不思議に思うだけ。もしくは、今、笑顔を見せたら、もう終わりなのかと受け取られる可能性もあります。
しかし、その前には「となりで」と添えられています。ここで、笑顔を見せてほしい理由が示されています。そう、ボクのそばにいてほしいと。この言葉があることで、「そうか、この人はわたしと一緒にいたいんだ」と理解してもらえるのです。
さらに、その前には、「いつになっても」と、しかも2回繰り返して伝えています。こう言われて、「今だけでなく、すっと一緒にいたいのね」と将来にわたって必要とされていることが実感できるのです。
つまり、この2行は、笑顔を見たいといいながらも、キミとずっと一緒にいたいと伝えている歌詞なんです。ここで表面的になぞって「笑顔を見たい」だけを伝えてはダメ。
こんな風に、言葉とは、文脈があって意味を持ちます。言語学的には、状況意味論。一節には意味はなく、状況の中に意味があるという考え方。脳機能学者でカーネギーメロン大学博士の苫米地英人サンは、著書『英語は逆から学べ!』(フォレスト出版)の中でそう説明しています。
これに照らせば、「笑顔が見たい」という一節を切り取っても、この歌に登場する「ボク」の真意はそこにありません。この2行、ひいてはこの歌全体の状況を通して、ずっと一緒にいたい気持ちが真意。その時間の長さにキュンと来るのです。
だから、コピーライティングやセールスライティングでも、単語ではなく状況を考えなければなりません。その世界では、読み手のこころを動かすワード集なんてものが作られています。その言葉を使うと、注目してくれたり、買ってくれたりしてくれやすくなるというもの。
ただ、安易に言葉だけ文章に持ってきても、それが読み手には伝わりません。表面的ではなく、その本質を汲み取ったうえでテクニックを使う必要があります。そんなことをKing & Princeの『シンデレラガール』から、学ぶことができました。
もっといえば、歌詞の中のキミ、つまりは、聴き手の女性は、曲のタイトルのとおり「シンデレラ」と呼ばれます。お姫様扱いされているだけでもポイントは高い。テクニック的には、一緒にいたいキミが、12時までの時間制約のあるプリンセスという対比もお上手。
ダメ押しは、キミはシンデレラと歌っているグループ名が「King & Prince」。王と王子様ですよ。もう出来過ぎ。完璧な構成です。
あなたがビジネスで顧客をキュンキュンさせたいなら、状況から意味を伝えてみては。King & Princeのように、顧客をお姫様のように接しないとね。