音楽の威力。実感したことがありますか。
アスリートが試合前にいつも同じ曲を聞くことで、気分をアップさせる話がありますよね。そんな風に、自ら音楽を使って気分へ影響を与えるもの。
ボクは、10代の頃、ボクシングジムに通っていました。小学校5年から高校2年まで。そのジムではBGMが流れていました。
ボクシングでの練習では、リズム良くステップを踏んだり、縄跳びを飛んだりすることがあります。今思えば、BGMに合わせて体を動かすことを狙っていたんじゃないかと。
そんなBGMの中には、それが練習中にかかると、みんな、急に動きが早くなるものがあります。その曲になると縄跳びを早く飛ぶ人もいれば、サンドバッグを猛打する人もいます。もちろん、ボクもそのひとり。
どの曲がボクサーたちの動きを早めるのか。それは、映画「ロッキー」のテーマ曲。当時は、この2つの曲が練習中のスピードをアップさせていました。
ひとつは、『Gonna fly now』。ロッキーのどのシリーズでも流れるテーマ曲。オープニングのトランペットのフレーズが象徴的。今でもバラエティやコントでボクシングのシーンだと、必ずといっていいほど流れる曲。これがかかると、みんな、全力で打ち合ったり、全速力で縄跳びを飛んだりと、激しいったらありゃしない。
もうひとつは、『Eye of the Tiger』(アイ・オブ・ザ・タイガー)。これは、1982年に放映された「ロッキー3」の主題歌。アメリカのロックバンド「サバイバー」による楽曲。こちらも、イントロのギターのフレーズが印象的。これから激しく動いていくぞ、という気分にさせてくれます。
この2つのBGMが流れるとボクも全力になることから、音楽の威力は身をもって体験しています。もちろん、映画「ロッキー」シリーズを見ていた影響が大きい。それを見ていない人にとっては、そこまで全力にはならないでしょう。
これは心理的には、アンカーとトリガーの関係として説明されます。当時、ボクシングをしていた人にとっては、映画の世界観がアンカー(錨:いかり)のように刻み込まれています。ロッキーの曲がトリガー(引き金)となって、その世界感が一瞬で再現されるのです。
だから、ロッキーの映画に関心がなければ、テーマ曲を耳にしても、何も引き出されません。その世界観が刻み込まれていないからです。
アンカーとトリガーによる効果をうまく使えば、ビジネスやキャリアを飛躍させることが可能になります。まず、アンカーとして成功している状況や望んでいる状況を刻み込みます。次に、それを引き出すトリガーを作ります。トリガーは曲ではなくても、見るものや触るものでもOK。すると、そのトリガーを見たり、聴いたり、触れたりすることで、アンカーが引き出されるというワケ。
ただし、気をつけたいのが、アンカーは良いことばかりじゃない、ってこと。自分にとって悪いことも刻み込まれてしまう可能性があるからです。こうなってしまうと、トリガーによって嫌な感情が蘇ってしまいます。
だから、嫌なことがあったら、モノにあたってはいけない。モノにあたることで、それをトリガーとして知らずに植え付けてしまう場合があるからです。もしかすると、負の感情のアンカーとトリガーについて、あなたにも思い当たることがあるかもしれません。
そういう意味では、好きなものに囲まれているのは正しい行為。好きな人や風景の写真を置くこと。好きなグッズを身近に置いておくこと。好きな曲をBGMで流すこと。記憶をトリガーにするよりは、見たり聴いたり触れたりできるもののほうが、ひと手間の努力がいらないため、より効果的でしょう。
これを応用したものに、自分の望む状態の写真を手帳に貼り付ける手法があります。これも、トリガー。毎日、目にする手帳に貼っておけば、否が応でも写真が目に入ってきます。すると、望む状態を毎日のように引き出すことができます。
こんな簡単なことで望む状態が達成できるなら、リスクフリー。音楽の威力を実感しているボクが言うのですから、あなたもぜひ。ボクも、今年の手帳に何を貼ろうか。