ワークショップ型セミナーで、ファシリテーターが務めるべきこと。それは、受講者を前のめりに参加させること。その場の主役は、あくまでも受講者。ファシリテーターは、受講者の変化を促す役割。
受講者を参加させていくには、不安を取り除く必要があります。これから一緒にグループワークをしていくメンバーがどんな人かも知らずにセミナーが進んでいくことには、心理的な抵抗がある。
周りの人に安心を感じられないと、セミナーの内容がちゃんと入ってこない。だから、一緒にワークをしていくメンバーについて知っている状態が良い。そこで、グループのメンバーを理解していく仕掛けをチョイチョイとはさんでいきます。
例えば、誕生日が一番早く訪れる人から発表しましょう、という仕掛け。こう呼び掛けると、多くの人は、「えっ」と反応します。そんなの知らないよ、と。
セミナーで初めて会う人はもちろんのこと、社内でワークショップ型のセミナーを開催するときも、社内の人の誕生日はそうそう知っていない。だから、「誕生日はいつですか」とお互いに確かめることになります。それを聞いて、知人と近くの誕生日だとわかると、それだけでも親近感がわきます。
ときどき、誕生日が一緒のときがあります。ボクはこれまで、3度、同じ誕生日の人に出会いました。たまたま参加したセミナーで、たまたま隣に座っている人が誕生日だと知ると、一気に親密になれます。
また、ボクがファシリテーターのときにも、お隣りの方の誕生日が同じだったことがありました。そのときには、生まれた時間まで確認して、どちらが早いかで発表する、しないを決めている人もいました。
こうした親密感を増すための仕掛けを、ワークショップ型のセミナーでいくつか組み込んでいます。その中でボクが好きなのは、「親指が大きい人から発表しましょう」という仕掛け。面白いのが、みなさん、かなり厳密に測定していること。ミリ単位でどちらが大きいかを真剣に測っている。その様子はファシリテーターの側から見ていて、微笑ましいものです。
昨日も、ワークショップ型セミナーで、この親指の仕掛けを行っていたときに、はたと気づきました。これ、ただ単に、お互いを知るための仕掛けではないことを。
あるテーブルで、四人がみんな、親指だけを立てた右手をテーブルの中央に寄せて、大きさを測っていたのです。その様子を見て、発見しました。「これは、いいねポーズだったんだ!」と。このポーズを意識させずに行わせる仕掛けでもあったのです。
というのも、グループのメンバーが何の疑いもなく、相手に対して「いいね」とメッセージを送っていることを意味しています。反対から見れば、グループのメンバーから「いいね」と言われている。つまり、メンバーから受け入れられていることを無意識に感じ取っていることになるのです。まさか、そんな効果まであったとは。
いわゆる、「パワーポーズ」と呼ばれるやつ。人の感情とポーズとには強い関係がある。例えば、落ち込んだときには、落ち込んだ姿勢を取っている。首を曲げて下を向き、肩を落とし、手もだら~んとしたポーズ。ライザップのCMの、取り組み前の様子がそれ。
反対に、落ち込んだ姿勢をとっていると、感情まで落ち込んでいきます。試しに、このブログを読むのをいったん止めて、落ち込んだ姿勢を1分ほど試してみてください、どうぞ。
はい、おかえりなさい。ちょっと落ち込んだ感情になってきませんでしたか。
それじゃ、次に、両手を大きく上に突き出し、「やったー」と叫ぶようなポーズをとってみてください。なんなら、実際に「やったー」と叫んでも良い。なお、効果があるハズ。
どうです、やってみましたか。なんだか元気になってきたでしょ。これがパワーポーズの効果。感情から姿勢への方向だけではなく、姿勢から感情への方向もある。それを上手く使っていくのです。
だから、親指の仕掛けは、いいねというパワーポーズを意識の下に送り込んでいる。すると、知らずに、受け入れられ感が増していく。ボクはいつも、誕生日の仕掛けの次に、親指の仕掛けという順番が多かったのですが、反対のほうがより効果的かも。来週のワークショップ型セミナーで、順番を入れ替えて試してみることにしよっと。