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本の「はじめに」は、セールスレターなんだよ

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

文章の1行目は、一体、何のためにあるか。この答えを即座に言えるなら、きっと、マーケティングに詳しい人。なぜなら、この質問の答えは、マーケティングの中でもセールスレターの分野では、よく知られた教えだからです。

 それは、2行目を読ませるため。1行目で読者の関心を失っては、その先の提案に辿り着けない。セールスレターのゴールは、モノやサービスを買ってもらうこと。ランディングページでも同じ。ランディングページの場合、そのゴールが販売ではなく、連絡先の取得にあるケースもあるものの、ゴールに向かうという意味では何も変わらない。

 では、書籍だと、どうなるか。多くの本には「はじめに」のページが設けられています。マーケティングの教えを書籍にも当てはめるなら、本文を読ませるために存在していることになります。

 というのも、「はじめに」のページは、本文を読み始める前に目を通すことが多いページだから。本をよく読む人なら、このことをよく理解できるでしょう。書店である本を手にしたときに、買うかどうかを、この「はじめに」を読んで判断しているハズ。

 ボクが思うに、この意味では、専門書はひどいものが多い。想定している読者にとって、どーでもいい内容しか書かれていません。内容がないものだから、1ページ程度しか書くことが続かない。

 最近、買った専門書も、やはりそのタイプ。その部分を書いた人は、組織の長の方。名前を見て、なお納得。あまり出版事情に明るくない人でしたよ。

 書籍のコンテンツによほど魅力がない場合には、この「はじめに」で読者の関心を惹きつけられないと、そんなに面白い内容じゃないなと判断された結果、購入を見送られてしまいます。もちろん、本文まで読み進めてもらう機会も失います。モッタイナイったら、ありゃしない。

 この点、ビジネス書はすごい。「はじめに」の部分にかなりの力を入れているのがわかります。いかに読者の関心を惹きつけ、かつ、本文に読み進める仕掛けが、あちこちに散りばめられているのです。

 ボクは、ビジネス書を読んだ量が1,000冊を超えた頃から、「はじめに」にパターンがあるように感じました。こういうときって、ディープラーニングを実践しているような感覚になりますね。そこで、分析を始めました。著者ごとの傾向だったり、編集者ごとの傾向だったりと、調べまくりました。

 その書き方のヒントをパーツで理解し始めていたものの、体系立てられるほどには至っていませんでした。そのときに出会ったのが、セールスレター。マーケティングの分野にハマっていったときに、このセールスレターに行き着きました。

 セールスレター自体にのめり込んでいくうちに、「あれ、これって、本の「はじめに」に活かせるんじゃないの」と気づきました。セールスレターは、売ろうとしているモノやサービスについて関心を持っていない人に対して、最終的には買ってもらうことを目的とした一連の文章。ならば、これを本の「はじめに」に適用すれば、本を買ってもらえる、本文を読んでもらえる。

 で、ボクはあるときから単行本や論文の「はじめに」について、セールスレターの教えに沿って書くようにしたのです。何をどのような順番で書けばよいかの構成であったり、個々のパーツで書くときに効果的なテクニックだったりと。

 そうして完成したものは、ビジネス書の「はじめに」と同じような効果が得られています。実際、知り合いの会計士からも、「竹村さんの本の最初のほうを読んでいると、つい買いたくなるんだよね」と言ってもらえたこともあります。

 ちなみに、そんなボクの本の「はじめに」は、このブログでご覧いただけます。ブログ用に少し加工したうえでアップしたもの。

税効果会計における 繰延税金資産の回収可能性の実務〈全面改訂版〉

M&A会計の実務

 それにしても、もっと専門書の「はじめに」にビジネス書やセールスレターの知見が活かされると良いのに。あなたが本を書くときに、その内容を真剣に広めたいなら、この「はじめに」にも力を入れることを強くオススメします。

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