経営で大事なことは、ビジネスモデルをデザインすること。顧客の快を増やす、あるいは、不快を減らすために、どのような価値をどのように提供するか。また、顧客とどのような関係を築く結果、どのように収益を得るか。経営のうち顧客に目を向けたところでは、この5つがポイントになります。
顧客と一口にいっても、いろんな段階があります。大きくは、次の3段階。1段階目は、あなたが提供する価値について、まだ購入に至っていないけれども関心は持っている見込み客。2段階目は、一度、購入している既存客。3段階目は、何度も購入してくれる継続客。
これらの段階に応じて、あなたの呼びかけも当然に変わってきます。その違いが、なんと、書籍になってまとめられているのです。それは、『DotCom Secrets ネットで高額商品が勝手に売れる㊙セールス・ファネル構築術』(ダイレクト出版)という本。著者のラッセル・ブランソンは、オンラインでのサービスを自ら展開するとともに、そのコンサルティングも行っている人。
この本で強調されているのは、「価値の階段」をデザインすること。縦軸を価値、また、横軸を価格とした図を描いたときに、それらの関係が右上に登っていく階段状になると言います。ビジネスのゴールは、この図の一番右上の角。ここでは、最高の価値を提供するため、受け取る報酬も最高になる。ここに顧客を連れていくためのデザインが必要といいます。
この「価値の階段」が意味しているのは、提供できるものが1つではダメだということ。確かに、一度だけ売ることで顧客との関係がなくなるのは、ビジネスを継続していくのが大変。価値を提供する側からすれば、何度も買ってもらえる関係のほうがビジネスは継続しやすい。このとき、提供できるものを複数にできれば、顧客は「価値の階段」を登っていくことで、最高の価値を手に入れることができます。
以前のブログでもお話ししたように、一度だけ売っておしまい、という関係は、それを買ってくれた顧客に失礼です。あなたは、最高だと自信をもった製品やサービスを提供した。一方、顧客はその提供する価値を必要として買い、また、それに満足している。その価値をもっと欲しがっている。
顧客がそれを欲しがっているにもかかわらず、あなたが何もフォローしないとどうなるか。路頭に迷った顧客は、あなたよりも粗悪な価値を提供するところにすがるしかない。だって、あなたが扱っているものが最高なのですからね。顧客は品質に満足できないまま、それを買い続けなければなりません。これは、悲劇。だったら最初から、あなたはその価値を提供しないほうが良かった。そうですよね。
このように、買ってくれたお客さんに責任を果たすためには、あなたはビジネスを継続させていく必要がある。だから、継続できるようなビジネスをデザインしておくべきなのです。
顧客との関係を継続していくためには、買い続けてもらう工夫が必要。それが、あなたが提供する価値を高めていく「価値の階段」。この本の著者が制作販売しているウェブ・マーケティング用のソフトウェアでは、価値の階段は、無料の質問、無料の本、ウェブ上でのセミナー、自宅学習やイベント、インナーサークルという順番で価値の階段を登っていくように設計しているとのこと。
何も複数のものを扱う必要はありません。ひとつの価値でも、その受け取り方を変えていけば良い。その変え方は、コンフォータブルかどうか。最初は最低限の価値提供から始める。階段を登っていくにつれて、待遇が良くなってくるというもの。
この本の著者のソフトウェアも、コンフォータブルになっています。さらに徹底しているのは、この本の位置づけ。こうしたマーケティングの秘訣をさらけ出しているため、この本だけを買っても読者にとって価値が高い。数年前なら、この値段でここまでのコンテンツを得ることは難しかったでしょう。
で、本を読みながら「すごい内容だなあ。これを実践したいなあ」と感じたときに、実行の壁にぶち当たる。何かシステムがないと、とてもやりきれない。すると、本の終わりには、著者が制作販売しているソフトウェアでは、簡単に実践できると紹介している。価値の階段をどうぞ、お登りください、と言わんばかりに。
別にそれが悪いという話ではなく、ちゃんと動線が作られていることに着目すべき。本を売って終わりではなく、その後のフォローや関係性にまで配慮されているのです。もっとも、このソフトウェアを売るために、その手前に本を書いたと見たほうが正解でしょう。
ボクも著者の端くれの端くれとして、つい、本を書いたことで満足してしまいがち。ちゃんと、読者のことを考えて、その後のフォローもしたほうが良い。それは、セミナーかもしれないし、教材かもしれないし、コンサルティングかもしれない。いずれにせよ、価値の階段をデザインすることが大事。
ちょうど明日、ボクは大学生に向けて、ビジネスモデルを説明する機会があります。そこで、このブログ記事を紹介することで、受講者のフォローができます。ここまで読んでもらえたら、あのビジネスモデル・キャンバスの右側はそういうことなんだと、より一層、理解を深められたハズ。
あっ、セミナーの後に、こうして顧客との関係を築くのもひとつの方法ですね。これから使っていこうっと。