Business model

特許戦争で学ぶ、ビジネスのスピード感

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 ビジネスでは、スピードが重視される。こういう話をすると、今ひとつ、ピンと来ない人がいます。学生さんならいざ知らず、社会人であっても、そういう環境にいないと、スピード感を理解できないでしょう。

 でも、この話を聞くと、スピードが大事なことが理解できるハズ。かつて、TOKYO FMで放送されていたラジオ番組に、「SUNTORY SATURDAY WAITING BAR AVANTI」がありました。あるとき、ゲストで来ていたのが、日立製作所で特許関係の仕事をしていた作田康夫サン。特許戦争の話をしていました。

 既存の製品に改良を加えていく場合に、コストも成約されている中では、取り得る選択肢が限られてくる。すると、同業他社は皆、同じことを考えて同じような製品開発を進めていく。開発の目処がついて特許を出願しようとする時期も、自ずと似通ってくる。

 必死に製品開発をしてきたにもかかわらず、いざ、特許庁へ特許を出願しにいくと、すでに同業他社が先に出願していることも。その差は、1ヶ月違いや2ヶ月違いなんてザラ。1日違いだったこともあったそうです。たったの1日ですよ、1日。

 特許は、先に出願したものが得られる権利。いくら、アイデアを思いついたり、製品を開発したりした時点が早くても、その特許の出願が遅ければ何の権利も得られない。たった1日の差で、特許は同業他社に持っていかれる。

 それまで注ぎ込んできた労力や資金が報われなくなってしまうだけでなく、それを使用することができなることもあれば、お金を払わないといけないこともある。そういうシビアな世界。こんな話を聞くと、いかにスピードが大事なのかがよく理解できますね。

 さらに厳しいことをいえば、時間をかけると良いアイデアが生まれる、完成度の高い仕事ができるという誤解があるとも指摘できます。時間をかければ思考が深まる一方で、時間をかけなければ思考が浅くなる、という勘違い。

 この考えには、時間をかけるか、かけないかの軸と、思考が深いか、浅いかの軸があります。これらの組み合わせが4種類のところ、2つしか見ていない。時間をかけて思考が浅いものと、時間をかけなくても思考が深いもの。

 で、ビジネスでスピードが大事というのは、この4つのうち「時間をかけなくても思考が深いもの」を前提としています。これが理解されていない。

 そもそも、思考が浅いものは、時間をかけようがかけまいが、求められていない。そんなものを持ってくるな、って一蹴されるだけ。誰も、そんなレベルでスピード感を話してはいない。ここで、思考が浅い軸は消えます。

 また、いくら思考が深くても、時間がかかっては意味がない。特許の出願のように、たった1日遅れでも、大損害だから。ここで、時間がかかる軸も消えます。

 したがって、「時間をかけなくても思考が深いもの」しか残らないのです。といっても、時間はかけすぎないレベルで問題ない。一定の調査や観察で裏付けがないと、単なる憶測で走ってしまうから。また、思考も深すぎないレベルで大丈夫。

 時間をかけすぎず、かつ、思考も深すぎない段階で、マーケットの反応を見るのがよい。完成なんてあり得ないため、ある程度、出来上がった時点で、顧客の声を聞いてブラッシュアップしていく。これがビジネスの鉄則。

 ところが、ボクが見聞きしてきた中では、誤解している人は、時間をかけて思考が浅くなりがち。ここから、「時間をかけなくても思考が深いもの」に至るには、思考を深めるようになるのが先。品質が悪いものを短時間で仕上げても意味がありませんからね。

 思考を深めるには、大量のインプットと大量のアウトプットが不可欠。英単語を覚えなきゃ、英会話で自由自在に表現することも無理。これらの両輪で思考を言語化していくことで、思考が深まっていくのです。

 こうして思考が深すぎないレベルにまで達すると、時間もかかりすぎないレベルに自ずとシフトしていく。思考を深めることと時間をかけないこととは、正比例の関係にない。一定程度、思考が深まったときに、急激に時間がかからなくなる。そこまでは数稽古が必要なんです。世の中、ショートカットなんてありませんからね。

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