若い人から、鋭い質問が来たとき。セミナー講師やワークショップ型セミナーのファシリテーターとして、こんなに至福のときはない。だって、ぼーっと受講していたら、そんなに鋭い質問は来ないから。
先日、ブログ記事「10分で大学生がビジネスモデル・キャンバスを描いたあとは」でお話ししたとおり、大学生に向けてビジネスモデル・キャンバスを描くワークショップ型のセミナーを開催してきました。そこで、受講していた大学生から、こんな質問が来たのです。
「ビジネスモデル・キャンバスを描くときに、顧客からスタートしたのですが、他の要素からスタートすることはあるのでしょうか?」
この質問、実は、ビジネスの基本に直結するもの。思わず、「良い質問だ~」と返答したほどに、最高の質問が来たのです。いやいやいや、ボクが同じ歳のときに、おそらく、そんな順番を気にすることはなかった。数年前でも、そんなところに気が回るとは思えません。
答えは、顧客以外にスタートはありえない。なぜなら、ビジネスとは、顧客の快を増やすか、または、不快を減らすかの2つの方向に応えるしかないから。
ここで勘違いしがちなのは、自身の強みから考えること。自分はこれが得意だとか、これが強みだとか、そういう自分視点からスタートする誤解。顧客がどうかはまったく考慮していないことが、もはや、アウト。顧客からすると、「そんなの、いらんがな」という感じ。
そうではなく、顧客の快を増やすか、不快を減らすかからスタートすれば、聞く耳を持ってもらえます。また、それがビジネスの基本だとすると、ビジネスモデル・キャンバスのスタートは、顧客以外にあり得ない。
そんなビジネスモデルの根本に直結するような質問を二十歳そこらで投げかけられることが、とんでもなく凄いこと。それに比べると、当時のボクは鼻水を垂らしていたようなもの。ホント、先日の大学生は凄い。
ところで、このビジネスモデル・キャンバスは、個人のキャリアにも適用することができます。それを解説した本が、ティム・クラーク氏による『ビジネスモデルYOU』(翔泳社)なんです。ビジネスモデル・キャンバスの構成そのままに、それを個人のキャリアに当てはめたもの。
しかし、その個人のキャリア版のビジネスモデル・キャンバスは、キーリソースからスタートします。つまり、自身の強みや才能から始まるのです。確かに、キャリアを検討するときには、強みや才能を活かそう、という議論になりがち。
とはいえ、個人のキャリアであっても、誰かの役に立つことが大事。企業のビジネスモデル・キャンバスと同じように、誰の役に立つか、誰のために自身の価値を提供していくかにフォーカスすべきなんです。
相手の身にもなってごらんなさいな。あなたが求めていないことを、相手が得意だからといって押し付けられる状況はとても耐えられない。余計なお世話でもあれば、そもそも興味すらない。
だから、企業のビジネスモデルであっても、個人のキャリアであっても、顧客、つまりは、誰の役に立ちたいかを起点とすべきなんです。そこを踏み外した瞬間に、押しつけ営業に成り下がってしまいます。そりゃ、ダメっしょ。
ということは、ビジネスモデル・キャンバスを企業として使おうが、個人として使おうが、そのスタートは、一番右にある「顧客セグメント」以外にない。ビジネスモデル・キャンバスを埋めていく順番には、ちゃんとした理由があるのです。どこからスタートして良いものではない。
そんな根本的な意味合いに、僅か数十分しか触れていない状態で気付いた専修大学の学生さんは、もう凄いと言うしかない。でも、そんな本質的な質問を投げかけられる講座は、講師やファシリテーターとして、このうえなく楽しい。こういう話を他の受講者にもシェアできる機会が得られることが嬉しいのです。
これだから、やる気のある人向けの研修やセミナーはやめられない。次は、あなたの参加をお待ちしています。もちろん、本質的な質問つきで。