Business model

バリュー・プロボジション・デザインはモノマネから学べ

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。)  

モノマネには、2つの方向性があるってご存知でしょうか。しかも、ビジネスにも大いに影響してくると。

 ボクは昔から、モノマネをしてきました。学生の頃は、先生のモノマネを。また、職場では、上司のモノマネを。そんなモノマネには、ある特徴があります。

 それは、笑いがあること。

 ボクのモノマネは、皆が笑ってくれます。面白くて何度も求められることもありました。そう、観ている人が楽しんでくれる方向性のモノマネをボクはしているのです。これが、2つある方向性のうちのひとつ。

 もうひとつの方向性は、モノマネの対象とする人にできるだけ近づくこと。声色や話し方、イントネーションなど、どんな観点からでもモノマネの対象とする人に近づこうとするのです。

 この方向性のモノマネにあるのは、「すごーい」という反応。モノマネの対象とする本人に似ているほどに観客は「おおー」と感動する。しかし、そこには笑いは起こりません。

 ここからわかることは、似ていることを極める方向性には限界がある、ということ。モノマネの対象とする本人に近づけば近づこうとすると、だったら本人でいいや、となってしまうから。本人を超えることはないのです。

 これに対して、観客の楽しみを追求する方向性だと、その限界はなくなります。比較対象がなくなります。モノマネの対象とする人と比べられることがないのです。

 マーケティング的にも、比較されないことは重要です。類似するサービスと比較されてしまうと、値段もそのサービスとの比較になってしまいます。ところが、まったく異なるサービスと比較することによって、値段も違う設定として受け取ってもらえます。

 よく言われるのが、りんごをみかんと比べるな、という格言。似たようなフルーツとの比較だと、その味や値段と比較されてしまいます。結局、単価が百円を超えるかどうか。

 これに対して、りんごを育てた手間を、高級ワインを作る手間と比較して説明したとします。すると、ワインの値段との比較になります。単価が数千円を超える可能性も否定できません。

 このように、比較される対象をどう設定するかがマーケティング的にはキモになります。モノマネの話に戻すと、比較対象がモノマネの対象とする本人では、近づくほどに本人が良くなることが理解できるしょう。

 だから、比較されない方向性のほうが、戦略的には間違いなく良い。その代表が、コロッケさん。モノマネの対象とする人に寄せてはいるものの、その本質は極端にデフォルメした表現。誰もが、モノマネの本人とは違うと感じながらも、大いに笑い、大いに喜ばれています。似せる方向性ではなく、楽しんでもらう方向性を選んでいるのです。

 このコロッケさんの方向性は、モノマネ業界のイノベーションだとボクは感じています。誰もがモノマネとは、その本人に似せることだという固定観念でいた中で、崩すどころか、むしろまったく別の観点から攻めてきます。それでいて、観客は喜んで受け入れている。

 そう、観客は、似ていることを求めているのではなく、笑えることを求めているのです。もちろん、人によって違いはあるものの、コロッケさんの成果から分析するに、いかに観客に喜んでもらえるかが大事なのです。

 これはビジネスモデル的にいえば、バリュー・プロボジション・デザイン。顧客のペインを減らしたり除いたりすることや、顧客のゲインを増やしたり付け足したりすること。観客に喜んでもらえるなら、モノマネの本人に似せるだけの方向性だけではなく、たとえ本人に似ていなくても観客にドカドカ笑ってもらえる方向性もアリなのです。

 ビジネスの世界では、ついスペックの追求に走りがち。キレイだとか、早いだとか、薄いだとか。しかし、顧客がそこまで求めていないものを追求したところで、提供する価値は高まらない。自社が重要と考えている価値が、顧客にとって価値ではないこともある。

 さて、あなたの提供する価値は、顧客が求めるでしょうか。コロッケさんのモノマネのように、違う方向性のほうが良いかもしれませんよ。

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