聞いたことがある言葉は、つい、よく知っていると誤解しがち。普段の生活で使っている言葉やビジネスで使われている用語に対して、「えっ、そんな意味だったの」と驚いた経験もあるハズ。
今回、ボクが認識を改めた言葉は、「ニッチ」。ビジネスの世界では、ニッチ戦略なんて呼ばれるように登場頻度の高い言葉。マイケル・ポーターによって世界的に有名なビジネス用語となっています。
この「ニッチ」という言葉、範囲が狭いことを指すものと勘違いしていないでしょうか。あるマーケットのうち、一部だけを狙っていくものだと。ボクはそう認識を誤っていました。
しかし、今日、手にした本によって、その認識を改めることができました。ニッチという言葉の意味以上に、ビジネスで成功する観点からの「ニッチ」という言葉としての捉え方。
その本とは、アーロン・ロス氏とジェイソン・レムキン氏による共著『成功しなきゃ、おかしい 「予測できる売上」をつくる技術』(実業之日本社)です。
アーロン・ロス氏は、「予測できる売上」という言葉を生んだ経営者。一方、ジェイソン・レムキン氏とは、IT企業を起業したり、ベンチャーキャピタリストであったりと、やはりビジネスに身を置いている方。
彼らは、最速成長に必要な要素を体系化しました。それは、「ニッチを決める」「予測可能なパイプラインを構築する」「売上をスケーラブルにする」「取引規模を大きくしていく」「耐え忍ぶ時期」「社員オーナーシップを採り入れる」「自分で運命を決める」の7つです。
ボクが響いたのは、最初の要素である「ニッチを決める」でした。ニッチを決めるには、ニッチが何かを理解しておく必要があります。ビジネスが最速で成長するための「ニッチ」というものを。
ニッチとは、一言で言えば、「焦点を絞り込む」ことだと言います。特定の業種や顧客タイプという意味合いでも良いが、それだけではありません。具体的には、次のように説明しています。
「特定」の頭痛の種を抱えている「特定」のターゲットに絞り込む。
ニッチという言葉を単に狭いという意味合いでしか捉えていないと、こちらの視点で、自身の強みやスキルなどを押し付けがち。そうではなく、あくまでも、顧客の視点で問題解決を図るために、解決すべき問題を特定し、また、それを抱えている顧客を特定するのが、ニッチだと捉えています。
確かに、ビジネスモデル・キャンバスでも、9つの要素のうち最初に取り掛かるのは、顧客セグメント。誰の問題解決を図るかが起点となります。その相手に対して、自身や自社がどのような価値を提供できるかを考えていく。どこまでも顧客視点なんです。
このようにニッチを定めていなければ、ビジネスの成長がうまく行かなくなるのがよく理解できますよね。問題解決をしようとしているにもかかわらず、その問題を特定することなく、解決手段だけを押し付けるようでは、とても契約には至りません。
また、ニッチに対して提供する価値は、「あったらいいな」ではなく、「ないと困る」ものであえるべしとも説きます。「ないと困る」ような価値を提供することによって、顧客の深い問題を解決しようと行動に移しやすい。その結果、ビジネスは成長しやすくなる。
さらに、この本は、これを実務的に深めていきます。顧客にとって「ないと困る」ものは何かを探るには、実世界へ出ていけと話します。こちらの推測でとどまっているのではなく、実際に相手の話を聞きに行くべきだと。で、それを即、テストするなどして全力を尽くすのだと。
ニッチを考えただけで終わりにせずに、それが「ないと困る」かどうかの裏をとり、また、実務で確かめもする。これが、最速成長に必要な要素の1番目。実務に携わっている人ほど、この説明が身に染みるんじゃないでしょうか。
あなたが新規事業の立ち上げに関わったり、スタートアップとして起業したりするなら、この「ニッチ」を今一度、振り返ってはいかがでしょうか。そのときに、547ページの本書のうち、第1部「ニッチを決める」だけでも十分に役立ちますよ。