金融庁サンも動き出しましたね。昨日の2020年5月21日、新型コロナウイルスに関する情報開示について、見解を発しました。具体的には、「新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報の開示について」というリリース。
これは、5月11日に公表されたASBJサンによる議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症に関する開示の考え方(追補)」を受けたもの。
追補前のバージョンでは、新型コロナウイルスの影響に関する一定の仮定に重要性がある場合には、追加情報としての開示を求めていました。しかし、2020年3月期の決算短信での開示状況を踏まえると、その追加情報が十分に行われていないとの意見があったため、急遽、追補の公表に至ったワケで。
このASBJサンの追補を受けて、翌日の5月12日に、JICPAサンは「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その2)」を更新します。新型コロナウイルスに関する会計上の見積りについて、監査上、今後の法定開示書類において留意すべきだと表明します。会計監査の立場からも、追加情報の開示を支持しました。
また、5月14日には日本証券アナリスト協会サンが、「新型コロナウイルス感染症と企業開示について」という声明を公表します。会社側が合理的に次期の業績予想を見積もれない場合には、追加情報という財務情報に限ることなく、記述情報として説明していくことも重要だと言います。財務報告の利用者の立場からも、追加情報や記述情報の開示を支持しました。
で、その一週間後の5月21日に、規制当局である金融庁サンからも、冒頭のとおり「新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報の開示について」をリリースします。そこでは、追加情報による具体的な開示、記述情報による充実した開示を強く期待するとの見解が述べられています。
しかし、話はそこで終わりません。新型コロナウイルス感染症の影響に係る仮定に関する追加情報の開示について、有価証券報告書レビューの対象に含めて審査するとも伝えました。つまり、新型コロナウイルス関連の追加情報が必要と認められる状況にもかかわらず注記されていないかどうかが、有報提出後にチェックされるのです。
金融庁サンのこの動きによって、俄然、強制力が伴ったように受け取ることができます。もちろん、すべての有報提出会社に必要な訳ではなく、会計上の見積りを行うにあたって置いた一定の仮定に関する情報に重要性がある企業が対象。
ただ、この議論は、業績予想を開示できないとする会社が続出している一方で、会計上の見積りにおける一定の仮定が追加情報として開示されていない状況が発端。業績予想ができないのに会計上の見積りができるのかという疑念です。ざっくりと整理すると、次のような図式となります。
・重要性なし → 業績予想ができる
・重要性あり → 追加情報が必要
あまり重要性がないものの多方面への配慮から業績予想を開示しなかった会社があるとしたら、金融庁サンの有報レビューでの対応に苦心されるかもしれません。
ちなみに、2020年5月22日現在で、新型コロナウイルス関連の見積りの仮定を追加情報として決算短信に開示している会社が増えているような印象を受けました。新型コロナウイルスの収束時期に関する仮定について記載された事例です。
そのうち、感応度分析も記載した事例が出てくるかも。上半期末には収束すると仮定を置いているが、年度末まで収束しない場合に4月度の業績が継続する場合でも固定資産の減損や繰延税金資産の回収可能性などの会計上の見積りに大きな影響は及ばない、という感じで。
有事のときには周りに歩調を合わせるより、自身の軸を持って対応していくほうが、結果的に良いと考えています。「あいつのせいだ」「あの会社と同じようにしたのに」と言っても、どうにもなりませんからね。
そんな財務報告の軸を持つには、僭越ながら、ボクのセミナー『新型コロナウイルスの影響による 後発事象を軸とした財務報告の検討』がオススメ。新型コロナウイルスに関する財務報告の影響について、後発事象のみならず、記述情報の海外事例も紹介しています。また、記述情報で押さえるべきポイントを3つに整理しています。
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