Accounting

孤独な経営者には会計士を

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。)  

経営者は、孤独。よく言われるフレーズです。会社で一番責任を負っていることから、周りに相談できない文脈で使われることがあります。感情面にフォーカスしたもの。

 一方で、「ひとり」という立場にフォーカスすることもできます。社内から正しい情報を共有されないという意味で孤独だと。周りが、いわゆる忖度してしまうから。先日、「週刊東洋経済 2020年5月23日号」を読んでいたときに、そう感じました。

 この雑誌には、京都大学の定兼仁サンによる「経済学者が読み解く現代社会のリアル」という連載記事があります。読んでいた号のタイトルは、「CFOと事業部門の利害対立をどうすれば解消できるか」。

 そこで指摘されていたのは、必ずしも経営者に正しい情報が伝達されるとは限らない、ということ。情報を伝達する担当者が、自身の立場や今後のキャリアなどを考慮すると、包み隠す情報を伝えないことがあるからです。

 このときに意外な役割を果たすのが、市場調査。外部の専門家に依頼して市場調査を行う場合、結果報告にあたって経営者に忖度する必要がない。そのため、市場調査が経営者にとって正しい情報を収集する手段となり得るのです。

 なるほど、経営者は立場としても孤独になりがちなため、忖度されて実態を曲解された情報を鵜呑しないように気をつけなければならない。内部から正しい情報が得られないなら、外部から得ればよい。それはそのとおり。

 ただ、市場調査の活用は、事業戦略を立案したり見直したりするときには有効。それに対して、経営管理やガバナンス、財務報告に関する正しい情報はどう得れば良いか。

 ボクが思うに、会計士が適任かと。会計士は独立した立場で会計監査を行います。経営者の側に立つこともなければ、株主や債権者の側に立つこともない。利害関係のない立場から、会計監査の判断を行っていく職業なんです。そこには忖度が入り込む余地がない。

 ただし、会計監査を受けている企業が前提となるため、どの企業でも使える手段ではありません。とはいえ、該当する企業であれば、会計士は決算書という切り口から企業のレッドフラッグやイエローフラッグを読み取っているため、活用しない手はない。

 経営者の中には、会計士や監査法人と話をすることにポジティブな姿勢の方もいらっしゃれば、ネガティブな姿勢の方もいらっしゃいます。ネガティブな姿勢の経営者は、はやく切り上げようとしたり、一方的に話しまくって終わろうとしたりします。

 これに対して、ポジティブな姿勢の経営者は、会計士から、会社の実態を聞き出そうと努めます。顕在化したリスクはもちろんのこと、潜在的なリスクについても知ろうとします。そんな経営者の方とディスカッションする機会があると、その姿勢に感心します。

 このような関係性を築くには、会計士側も信頼を得られるように振る舞う必要があります。例えば、通り一遍の質問で終わるのではなく、業界知識やその他の情報なども踏まえながら、会社の状況に照らして少し踏み込んだ話をするのです。

 ボクが以前に担当していたクライアントでも、こうした経営者とのディスカッションを行っていました。事前にアジェンダは提出しているものの、当日、やや突っ込んだ話も振ってみます。経営者から返答をいただき、その場が終わります。

 管理担当役員サンからの後日談で、「竹村先生からどんな質問が出てくるか、いつもヒヤヒヤしていましたよ」と伺いました。どうやら、あまり聞かれないけれども確かに大事な論点だと受け取っていただいていたようです。

 こうした話ができるのが、会計士の仕事の楽しいところ。ちょうど今、金融庁が有価証券報告書の記述情報を充実させる改正を行っているのは、投資家との対話をより促すことが目的。経営者が気づいていない視点を得ることで、業績やガバナンスを改善していくことを期待しているのです。まさに、経営者ディスカッションと同じ効果が期待できる。

 社外と対話を促すためのディスクロージャーを、ボクは「ダイアローグ・ディスクロージャー」と呼んでいます。令和時代の財務報告のあり方です。これに対応できない上場企業は投資家から相手にされずに淘汰されていくでしょう。だから、生き残りをかけてダイアローグ・ディスクロージャーを実現していかないといけない。決して大げさな話ではないのです。

 そんな話をまとめた書籍が、来月、発売になります。その名も「ダイアローグ・ディスクロージャー」。ピンと来た方は、ぜひ、お手にとってみてください。

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