ドイツの文豪ゲーテは、こんな言葉を残しました――「一つのことが万人にあてはまりはしない。めいめい自分にふさわしい流儀を求めよ」と。
この言葉は、企業の財務報告にも当てはまります。なぜなら、有価証券報告書において、経営者の視点を反映した記述情報の充実が求められているからです。自社固有の状況を踏まえた記述にしなければなりません。
とはいえ、2020年3月期からの有価証券報告書から強制適用されたばかりであるためか、まだまだ記述情報は充実していないのが現状です。どの企業でも通用するボイラープレート的な記述をしているようでは、財務報告の利用者からそっぽを向かれてしまいます。
そこで、KAM(監査上の主要な検討事項)を早期適用した事例から、財務報告のあり方について考えていく連載が、この「財務報告の流儀」シリーズ。今回は、次の事例を取り上げていきます。
(1)事例
証券コード 1333
会社名 マルハニチロ㈱
業種 水産・農林業
開示書類 有価証券報告書
決算日 2020年3月31日
監査法人 有限責任あずさ監査法人
会計方式 日本基準
(2)早期適用によるKAM
連結財務諸表に対するKAM
・Peter Pan Seafoods,Inc.が保有する有形固定資産の減損損失の認識の要否に関する判断
個別財務諸表に対するKAM
・「商品及び製品」及び「仕掛品」に含まれる水産物の評価
この事例から学ぶべきポイントは、「KAMだけでは完結しない」です。では、具体的な説明に入っていきましょう。(注:無料の「財務報告の流儀(お試し版)」はこちらから。)
P.S.
この解説がベースになった書籍『事例からみるKAMのポイントと実務解説―有価証券報告書の記載を充実させる取り組み―』(同文舘出版)はこちら。