収益認識の新基準への対応に関して、気になる2つの出来事がありました。このままでは、2021年4月1日以後に開始する事業年度への適用が間に合わないかもしれません。
1つの出来事は、財務会計基準機構の基準諮問会議での発言。2020年7月27日に開催された第39回の議事概要がホームページで公表されています。そのうち「(議事要旨)企業会計基準委員会の最近の活動状況について」において、次のとおり、収益認識について適用を心配する意見が記載されていました。
2021 年 3 月期は、見積の開示の会計基準や会計方針に関する会計基準、さらに KAM や新型コロナウイルス感染症への対応等があり、対応に苦慮している会社があると考えられる。その中で、来年 4 月 1 日より強制適用となる収益基準会計基準について準備が整っていない会社がないかについて調査をした方が良いのではないか。
具体的な統計が示されていないため、個人的な心配であれば良いのですが、もしも日本全体としての傾向だとすると、看過できない指摘です。特にこの収益認識の新基準は、上場企業のみならず、会社法監査を受けている企業も対象となるため、適用となる法人は広範に及びます。
ただでさえ、監査法人のリソースが不足している状態にある中で、収益認識のコンサルを提供できる法人は限られるでしょう。また、コンサルを提供できたとしても、それを受けられる会社の数は決して多くはないとも考えられます。上場企業を優先したとすると、会社法監査を受けている会社が対応できない可能性も指摘できます。また、地方の会社までサポートが及ばない可能性も考えられます。
もう1つの出来事は、日本公認会計士協会による「Q&A 収益認識の基本論点」の公表です。2020年7月31日に、同協会のホームページにて、その第1回が掲載されました。その公表にあたって、次のような記載に目が止まりました。
日本公認会計士協会は、「収益認識に関する会計基準」の円滑な導入を支援することを目的に、基礎的な論点を図表や設例を用いて解説する資料を取りまとめました。
同協会は監査をする立場の者を管轄しているのであって、会計のことは基本、ASBJが担うべきもの。それにもかかわらず、こうして「円滑な導入を支援」するために解説資料を提供するに至っています。このタイミングで提供したことから推測するに、多くの会社で円滑な導入が進んでいない証拠ではないでしょうか。
ちょうどボクは監査法人から独立した身であるため、こうしたサポートにある程度の時間を充てられます。監査人の立場を超えて、企業の方々により寄り添ってサポートしていきたいと考えているため、収益認識の新基準への対応が進んでいない状態を放っておくことはできません。
ただ、すべてが推測に過ぎません。見聞きした情報はあるものの、それで全体を推測するのは合理的ではありません。そこで、収益認識プロジェクトに関するアンケートを実施することによって、あなたの会社の状況をお聞かせいただけないでしょうか。
その回答を踏まえて、自分なりにできることを実施していきたいと考えています。個別のコンサルもあれば、全体的なワークショップ形式もあるでしょう。また、オンラインでの提供であれば、物理的な距離を超えて多くの方に届けることも可能です。
アンケートにご回答いただいた方には、結果を共有いたします。アンケートは、8つの質問で構成されています。そのうち6つは選択肢から選ぶだけの質問であるため、お時間はかかりません。
アンケートの期限は、【2020年8月7日(金)の13時まで】となります。ぜひ、あなたの会社の現状をお知らせください。
クリックして、「収益認識プロジェクトに関するアンケート」に回答する。(アンケートは終了しました)
P.S.
2020年8月23日に、緊急レポート「新・収益認識の対応プロジェクトが進まない理由」を作成しました。収益認識の新基準への対応プロジェクトが進まずに悩んでいる方々に向けてヒントになれば幸いです。
P.P.S.
こちらのE-Bookも、大した告知をしていないにもかかわらず、お手にとっていただいております。お役に立てば何よりです。