やっぱり、収益認識の新基準って、最初から注記もセットにして公表すべきでしたね。ネット界隈で、「あの基準は誰得?」といったコメントを見るたびに、何も理解されていないことを痛感するからです。
収益認識の新基準の最大のポイント
ボクが思うに、収益認識の新基準は、注記が最大のポイントです。それは、「新・収益認識の対応プロジェクトが進まない理由」でも説明したとおり。この注記の要求にいかに真摯に向き合うのかが大切なんです。
確かに、会計処理も大事です。それに基づき財務諸表が作成されるため、基礎中の基礎であることには違いありません。経理部門の方々にとっては、どうやって仕訳を切るかが最大の関心事になることにも頷けます。
しかし、利用者の立場に立ったときには、まったく違う世界が見えています。現状の財務諸表では、売上すなわち収益認識に関する情報が皆無といっても良い。せいぜい、セグメント情報くらいです。それも単一セグメントであるときには、損益計算書に計上された売上高以外の情報は何もないのです。
売上の情報が何も開示されていない現状をお忘れなく
そもそも、会計方針すら、工事進行基準が適用されていないときには、基本的に開示されません。何が、どのようなときに、いくら計上されるのかが、さっぱりと分かりません。たまたま、同じような売上が計上されている会社が新規に上場したときには、上場関連の書類からそれがわかることがある程度です。
損益計算書のトップラインがまったく情報が注記されない一方で、金融商品や企業結合、税効果会計、退職給付会計といった項目については詳細に注記される状況は、利用者の視点からは開示のバランスがあまりにも悪い。
その証拠に、IFRSやSECの基準によっている企業の財務諸表では、収益認識について、よく理解できます。計上の仕方もわかれば、売上の分解情報もわかります。企業の最も重要な項目についての説明に紙面を割いているのです。
アンバランスに気づいてほしい
こうした収益認識に関する定性情報や詳細な定量情報が注記されることこそ、新基準に最も期待されている役割です。作成サイドとしては当たり前すぎるために、こうした情報の価値に気づきにくくなっているかもしれませんが、企業外部の立場からすると極めて有益な情報です。なぜ、2021年になって、ようやく開示されるようになったのかが不思議なほど。
だから、企業には、収益認識の新基準には真摯に向き合って対応してほしい。収益の分解情報も、セグメント情報で十分だから不要だと安易に片付けることなく、真に開示すべき情報は何かという観点から慎重に判断してほしい。それこそが最も求められている情報です。
思うに、基準の趣旨が十分に伝わっていないかと。何事も、メッセージの出し方が大切です。収益認識の新基準についてリリースするときに、最初から注記もセットにしたうえで、いかに収益認識の開示が重要なことなのかを啓蒙するほどに書き込んでおくと、「誰得?」なんて発言は出てこなかったでしょう。
KAM(監査上の主要な検討事項)の早期適用では、予想以上に監査人が書き込んできた印象を受けました。さて、収益認識の新基準が強制適用となる2022年3月期以降には、企業はどこまで開示してくるかが楽しみです。
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