Accounting

有価証券報告書の提出期限とKAM早期適用

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

こんにちは、(企業の)KAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。

2020年10月30日(土)は、ハロウィンでした。コロナ禍にあって、例年とは違うハロウィンの楽しみ方で過ごした方もいらっしゃるでしょう。

ハロウィンが過ぎると、11月です。KAM(監査上の主要な検討事項)でいえば、2020年7月期の企業におけるKAMの早期適用の有無が判明する時期です。その企業では、10月末、つまりはハロウィンの日に有価証券報告書の提出期限を迎えるからです。

ちょうど、11月はKAMに関する研修を行うため、そのネタとしても、この調査は欠かせません。KAMが早期適用された事例はどの程度あったのか、あるいは、早期適用はなかったのかの確認に関心が集まります。

しかし、しかし、しかし。ここで疑問が生じました。

果たして、10月30日が土曜日という行政機関の休日であるときに、有価証券報告書の提出期限はいつなのか、という疑問です。

パッと思いつくのは、3つのパターン。

  • 10月30日の土曜日が提出期限であることに変わりはない。
  • 平日の金曜日、つまり10月29日に期限が前倒しされる。
  • 銀行の引き落としのように、休日後の平日、つまり11月2日(月)になる。

企業で有価証券報告書や四半期報告書などの提出事務を行っている方々にとっては当然のことなのでしょうが、企業外部の者にとっては知らない人も多いでしょう。実際、ボクも根拠を持っては答えられませんでした。

そこで、今回のブログでは、この調査と結果を共有しますね。

有価証券報告書の提出期限

有価証券報告書の提出期限は、金融商品取引法の第24条第1項に規定されています。それによると、内国会社については、事業年度が経過した後3ヶ月以内に提出しなければなりません。2020年7月期の企業では、10月30日(土)が期限でしたね。

このときに登場するのが、「行政機関の休日に関する法律」です。その第2条では、期限の特例が定められています。そこでは、「行政機関の休日に当たるときは、行政機関の休日の翌日をもつてその期限とみなす。」と規定されています。

注意したいのが、この後に続く、ただし書き。「ただし、法律又は法律に基づく命令に別段の定めがある場合は、この限りでない。」とあります。有価証券報告書の提出期限について金融商品取引法等で定めがないため、今回のケースでは関係ありません。

すると、2020年7月期の有価証券報告書の提出期限は、11月2日(月)となります。

EDINETへの提出時間

それが理解できたため、今日の2020年11月2日(月)にEDINETでKAMの早期適用の事例の有無を調べようとしましたが、、、ここでも疑問。

果たして果たして、EDINETにいつ有価証券報告書がアップされるのか、というタイミングです。

確かに11月2日が提出期限ではあるものの、それが24時までなのか、どこかの時間なのかが気になります。

調べたところ、EDINETのQ&Aに、ぴったりの内容が掲載されていました。

Q1.  EDINETで書類提出をするのに、利用時間の制限はありますか。
A1. 書類の提出は、原則として、平日の午前9時から午後5時15分まで行うことができます。

https://submit.edinet-fsa.go.jp/EKW0AZ0007.html#3_0

なるほど、ということは、17時15分までには2020年7月期の有価証券報告書が提出されるハズ。夕方まで待てば良いかと思いきや、ここでも疑問。

果たして果たして果たして、提出された有価証券報告書は、いつ、EDINETで公開されるのか。

調べたところ、「EDINET API 仕様書」に記載があるようで。

https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/EKW0EZ0015.html

そこには、「当日分のデータ(全て、発生時に情報が追加される)」と記載されていました。しかも、「当日分のデータは、日本時間8 時30 分過ぎから、原則1 分毎に更新されます。」とも。

つまり、2020年11月2日に提出された有価証券報告書は、1分後には閲覧ができるハズ、ですよね。なので、17時15分を過ぎてチェックをすれば、網羅性は確保できます。

結局、2020年7月期のKAM早期適用は?

お待たせしました。ついに、お知らせできます。

2020年7月期の企業におけるKAM早期適用の事例は、2020年11月2日17時18分現在で、ゼロでした。あまり積み上がっていきませんね。コロナ禍では物事の優先順位がガラリと変わってしまうため、やむを得ないのでしょう。

ボクが期待しているKAM早期適用の次の山場は、2020年12月期。その有価証券報告書の提出期限は、2021年3月31日(水)のため、行政機関の休日ではありません。海外並みのロックダウンのような事態がなければ、その翌日の朝には安心してチェックできますね。

それまでは、KAMの早期適用の事例は、引き続き、2020年3月期のものが対象です。その1社1社に対するKAMの分析は、ボクのブログでのシリーズ投稿「財務報告の流儀」で行っています。

ワンコインという有料のため、無料のお試し版はこちらからどうぞ。トリック・オア・ダウンロード!

P.S.

2020年3月期のKAM早期適用事例の解説は、書籍『事例からみるKAMのポイントと実務解説―有価証券報告書の記載を充実させる取り組み―』(同文舘出版)として発売されました!

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