Accounting

KAMの本が弁護士向けの情報専門誌で紹介される理由

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

こんにちは、企業のKAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。

またもや、拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説』が、法務系の専門誌に掲載されました。KAM(監査上の主要な検討事項)という会計監査の領域を扱っていながらも、その垣根を超えたところで紹介されているのです。

 

そこで、なぜ、KAMの本が法律関連の専門誌で取り上げられるのか、その理由を考えてみました。

 

弁護士ドットコムタイムズに掲載

今回、掲載されたのは、弁護士向けの季刊誌『弁護士ドットコムタイムズVol.59』。日本最大級の法律相談ポータルサイトの弁護士ドットコムが、3ヶ月ごとに販売する専門情報誌です。

その中で、「最新の関連書籍」というコーナーで紹介していただきました。このコーナーでは、各出版社から発売された最新刊からのオススメ書籍がセレクトされて掲載されます。

ということは、法律系の書籍が発売されている中で、あえてKAMを扱った本が紹介されているのです。しかも、毎週、毎月という頻度ではなく、3ヶ月に一度しか掲載チャンスがない中で。

ここで冒頭の質問「なぜ、KAMの本が法律関連の専門誌で取り上げられるのか」に戻ります。その答えは、「開示ガバナンス」にあるのではないでしょうか。

 

社外役員の立場からの開示ガバナンス

この専門誌の想定読者は、弁護士の方々。企業との関わりで言えば、顧問弁護士以外では、社外役員が多いでしょう。社外役員と聞くと、取締役会の執行状況という「活動」面を監督する役割に焦点が当たりがち。しかし、その活動を外部に説明する「報告」面でも活躍されています。

その報告で重要な位置づけのひとつが、財務報告。もちろん、社外役員は内部者のため、社内で何が行われているかはすでにご存知です。ただ、ここで知り得ている情報と開示されている内容とにズレがあると問題です。

誰が開示をコントロールしているのか、どの役員まで関与しているのか、また、関与していないことの正当性はあるかといった面から、開示の統制やガバナンスが有効かどうかを検討する必要があるでしょう。その開示ガバナンスの状況を探るきっかけとしてKAMが活用できるとしたら、関心が集まるのも納得がいきます。

 

分析手法の活用の仕方

拙著では、そんな開示ガバナンスを探る分析手法を紹介しています。いや、この分析手法を使ってKAMを解説しています。企業と監査人とで重要な事項に対する認識がズレていないかどうかの端緒をつかむ検討を行っているのです。

こうした分析は、社外役員の方々が、社内役員に対して重要と認識している事項をヒアリングする準備に用いることができます。また、監査法人に対して、なぜ他の事項がKAMではないかをヒアリングするときにも有益です。

こうして開示ガバナンスに役立つ分析を紹介しているからこそ、そうしたことに敏感な読者を持つ法務系の専門誌で拙著が取り上げられる機会が多いのではないでしょうか。そうでなければ、発行頻度が決して多くはない専門誌で、ジャンルの違う書籍をあえて紹介する必要性はありません。

 

経理をはじめとした財務報告に関わる人々や監査をしている会計士の方々が、あまりKAMに強い関心がないのではないか、と感じることがあります。制度が導入されたからと受け身の姿勢がどちらからも伺えるのです。開示ガバナンスに気が回らないほどにご多用だからかもしれませんが、とても残念なこと。

2021年3月期からのKAM強制適用について、事例がちらほら出始めています。時期的にはこれから本格化してきます。開示ガバナンスという面で心配を生じさせないようなKAMや企業の開示が頻出しないことをただただ願うばかりです。

 

P.S.

開示ガバナンスに不安を残さず財務報告を行いたいなら、まずは、拙著の紹介ページをご覧ください。どのような内容の本なのかを説明しているため、あなたに必要な本かどうかを判別できます。

 

KAM強制適用事例、第3号の登場前のページ

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