こんにちは、企業のKAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。
今日の2021年9月4日(土)、KAMの発表の場を視聴しました。それは、日本監査研究学会の第44回全国大会。自由論題報告として、KAMに関する報告が2つありました。
ボクはといえば、今年の2月に、『事例からみるKAMのポイントと実務解説―有価証券報告書の記載を充実させる取り組み―』という本を出したばかり。2020年3月期に早期適用されたKAMの実質的な数すべてを解説したもの。
先日も、日本監査研究学会で、統合報告の保証とKAMについて発表を行いました(あっ、2年前もしていました)。昨年は、日本内部統制研究学会で、KAMが内部統制報告制度に与える影響について発表しました。会計専門誌の『企業会計』や『旬刊経理情報』でもKAMに関連した寄稿も行っています。
なので、「もしかして、参考文献に取り上げられていたりして」と淡い期待を抱いていました。その結果をお伝えしますね。
ドキドキの参考文献
14時30分から、東北学院大学教授の佐久間義浩氏によって「監査上の主要な検討事項(KAM)の強制適用による影響」が報告されました。そのスライドの「はじめに」では、KAMの早期適用の状況に関する11の文献が列挙されています。2021年に発表されたものも含まれています。
ボクの本が、まさにKAMの早期適用事例を取り扱ったものであり、また、2021年の発売のため、対象期間に含まれています。そこで、11の文献をドキドキしながら確認していきます。
「1つ目は・・・違うな。2つ目も・・・まだか」とチェックしていったところ、最後の文献まで辿り着きます。あれ、ないや。そう、ボクの本は参考文献に取り上げられていませんでした。
う~ん、残念。研究者の方々の目にとまるには、まだまだですね。もっと頑張んなきゃ、と痛感しました。
以前、とある出版社の方から、「KAMの本では竹村先生の一人勝ち」と言われていたので、少し舞い上がっていたのかもしれません。いや、舞い上がっていたのでしょう。セミナーや執筆のお話しがあるからといって、慢心してはいけない。
もっと残念なのは、2021年3月期のKAMについての報告が先を越されたこと。まあ、元々、全体的な傾向を分析するつもりはなかったため、そういうニーズには応えられません。
ただ、実務的な観点から、しかも、KAMに書かれていないことも含めた分析を行わせたら、自信があります。2021年3月期の分析結果も深く掘り下げているので、早く披露したいですね。2021年10月からセミナーや執筆が予定されているので、楽しみにしていただけたら嬉しいです。
トゥールミン・モデルが取り上げられた
続く15時からは、東北公益文科大学准教授の松尾慎太郎氏から、「Toulminモデルによる『監査上の主要な検討事項(KAM)』の分析」について報告がありました。このToulmin(トゥールミン)モデルとは、ロジカルに説明するための方法論のこと。
これ、かなり前のボクの本で、取り上げています。その本は、2013年11月に発売された『税効果会計における 繰延税金資産の回収可能性の実務』です。
これは、ASBJの企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」を解説した〈全面改訂版〉の前のもの。当時の実務上のガイドラインであった、JICPAの監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」について解説しました。
この66号が硬直的・画一的に運用されていたという批判があったことから、1章分を使って、トゥールミン・モデルを用いて繰延税金資産の回収可能性をロジカルに主張することを説明しました。
この本の影響があったのか、ここで紹介した内容がいくつかASBJの適用指針に盛り込まれています。もっとも、この本がなくても同じ結果になった可能性もありますが、そこはボクが気持ちの良いように解釈しておきましょう。
見てくれている方々がいる
このように、会計や監査の領域で、ボクはトゥールミン・モデルを活用していました。やはり珍しがられたようで、会計専門誌『企業会計 2016年4月号』で、取り上げられたことがあります。当時は福島大学准教授であった衣川修平氏が、解題深書「税効果会計-その論争の歴史に学ぶ-」の中で、次のように紹介しています。
ここで数少ない文献の1つとして、竹村純也『税効果会計における 繰延税金資産の回収可能性の実務』(中央経済社、2013年)を挙げる。このなかで「トゥールミン・モデル」という論理展開モデルを用いたユニークな回収可能性の判断についての理論が提示されている。
このときの特集が「完全マスター! 繰延税金資産『回収可能性』適用指針」であったことから、気になる話が掲載されていないかどうかをチェックしていたときに、たまたま解題深書にボクの名前を見つけたため、即、購入。衣川先生とは面識がありませんでしたが、御礼の葉書を送りましたよ。
そんなことがあったため、「今回こそ、参考文献に取り上げられているはずだ」と、30分前の落胆をすっかり忘れながら、チェックを行います。「主要参考文献」というスライドで最初に挙がっていたのは、トゥールミン氏の本。「そりゃ、そうだよね」と思いながら、順に確認していくと、なんと、なんと、最後まで登場しませんでした。
まあ、ボクの当時の本のアイデアと同じとはいえ、KAMについて適用したものではないため、参考文献には取り上げられませんよね。でも良いんです。ちゃんと見てくれている方々がいらっしゃるので。
ここまでブログを読んでくれた、あなたもその一人ですね。
P.S.
2020年3月期に早期適用されたKAMについて分析した結果は、拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説』にてご覧いただけます。まずは、こちらの紹介ページをご確認ください。