企業にとって、財務報告は投資家とのコミュニケーションを図る第一歩。その財務報告には、財務諸表の本表のみならず、注記事項も含まれます。もちろん、記述情報も。
もし、財務諸表に注記した内容によって、投資家からリスクがとてつもなく大きいものと受け取られるとしたら。不用意に資本コストを引き上げる結果、企業価値の評価が引き下げられることも十分に考えられます。
実は、そんな事態を招きそうな注記事項があります。それは、見積開示会計基準に基づく注記。財務諸表に(重要な会計上の見積り)として注記しているもの。
2021年3月期から、見積開示会計基準が強制適用となりました。その開示状況を調査していると、「こんなふうに注記しているけど、必要以上にリスクを高める内容になっていなければ良いけど」とハラハラする事例も少なくありません。
そこで、今日の2021年9月6日、見積開示会計基準を徹底的に理解したうえで、個々の注記の作成ポイントを解説するセミナーの収録を行ってきました。それは、株式会社プロネクサスさん主催のセミナー「開示担当者・責任者のための見積開示会計基準実践講座」です。
このセミナー資料は、受講後の振り返りに役立てられることを目的として、見出しや図表で終わることのないよう、可能な限り文章での説明を尽くしました。そのため、スライドの総数は105ページとなりました。具体的な構成は、次のとおり。
- Ⅰ 見積開示会計基準の徹底理解
- 見積開示会計基準が求められた背景
- 海外の適用状況を活用する
- 見積開示会計基準の逐条解説
- 3要素と開示内容の関連
- Ⅱ 個々の注記作成のポイント
- 見積開示の実務
- 固定資産の減損
- 関係会社株式の評価
- 繰延税金資産の回収可能性
- 収益認識(工事進行基準)
- 企業が取り組むべき事項
- Ⅲ 見積開示に関連する対応
- 記述情報との関連
- KAM(監査上の主要な検討事項)との関連
- 監査手続との関連
セミナーは2時間30分。やはり、時間が足りません。しかし、基準の適用にあたっての誤解や混乱から抜け出すためには、必要な情報をお伝えしたい。その一心で説明しまくりました。
とはいえ、そんなに難しいものではありません。見積開示会計基準の注記に必要とされる3要素さえ理解できれば、あとは難なく進めていけます。その3要素を徹底的に理解してもらうために、事例を用いながら「これでもか」と言わんばかりに解説を展開していきました。
やっぱり、3時間くらいないと厳しいかな。セミナー終了後、プロネクサスさんのご担当者には、来年度も同じセミナーを行うときは3時間の枠を設定したいとお話ししてきました。ただ、それはそれで新規のコンテンツを盛り込むんだろうな、きっと。それは、さておき。
セミナーの構成をみて気になる内容がありましたら、ぜひ、ご視聴ください。2021年9月14日から10月14日の1ヶ月間は、いつでも、何回でもセミナー動画を視聴できます。反対に、この1ヶ月間を逃すと、次の開催は来年度になるかもしれません。この機会をお見逃しなく。
P.S.
このセミナーの内容が、「のれんの減損」にフォーカスした『伝わる開示を実現する「のれんの減損」の実務プロセス』として書籍化されました。セミナーを見逃してしまったときには、こちらの第3章「見積開示会計基準に基づく注記」をご覧ください。